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夢の世界での種族交流①(厨二病っぽい)


気がつくと、俺は質素な部屋の中にいた。

中心には大きめのテーブルと四つの椅子。


「やぁ人間くん。さきほどぶりだね」


声の方を向くとマギアさん…?がいた。確信が持てないのには理由がある。身体ちっさく、幼い姿になってしまっている。身長もいつもの半分くらいだ。


「ははは。随分と大きくなったじゃないか」

「いや、多分マギアさんが小さくなってるんだと思いますよ」

あのテーブルと椅子の大きさを見るに、マギアさんが小さくなっていると見て間違いない。


「……なるほど、今の私はあくまで精神体であり、この空間で反映される私の姿は、私自身の感覚や想像力に大きく左右されるというわけか……あまり鏡を見ないと、こういうことになってしまうわけだ」


そう。ここは夢の世界。夢魔さんたちの力を借りて、夢の中に仮想世界を作ってもらい、そこに招待してもらったというわけだ。

もちろん、夢魔と言っても他人と他人の夢を繋げるなんて能力は無い。そこら辺は、マギアさんの呪術がカバーしているらしい。



俺が作りたかった…というか、再現したかったのは、前世でいうところのVR chatだ。

夢魔さんは夢の世界で、その人が望むものや、その人の記憶をもとに、夢の中で映像を再現する力に長けている。

ので、中にいる人間が想像する姿を反映させたりなども出来るわけだ。


このサービスの活用は多岐にわたると考えている。

インターネットなんて当然無いこの世界で、遠くの人とコミュニケーションが取れるのはかなりウケが良いはずだ。

想像力次第で体を変えられるというところも強みだ。

体の不自由な人に楽しんでもらえたり、また若い姿でデートをしたいという老夫婦の願いを叶えたり、見た目を気にせず友達を作れたり……俺が想像もしない活用法もあるだろう。


もちろん利用者同士で性的な行為もできなくは無いが、それは夢魔さん次第でもある。

眠ってる間は、夢魔さんが魔法で脳への刺激を調整することで、感覚に反映させている。

夢魔さんが操作しないと性的快楽など得られないのだ。

でも、そういう用途でも需要は見込めるとは思うからそういうサービスを考えてみても良いかもしれない。

見た目も変えられるならかなり需要があるはずだ。




「ほへー。ちなみに俺は今どんな感じになってます?」

「普段と特段変わらんよ」

ほ、よかった。無意識に前世の姿になってたらどうしようかと思ってだけど杞憂だったみたい。


「ていうか、僕たち2人が一番乗りですね」

「彼女らは中々シャイなんだ…すぅ〜、ふぅ〜……流石に味がしないね、はは」

いつの間にかいつものキセルを出現させ、その小さなお口で咥えていた。


「こら!子供はタバコを吸ってはいけません!」

…あ、やべ、めっちゃ自然に取り上げちゃった。だって見た目が子供なんだもん。


「………」

ロリマギアさんからジトっと睨め上げられる。

だが顔が幼いのであんまり怖く無い。その代わりに何かに目覚めそうだ。

ほっぺぷっくりしてて可愛いんだもん。ツンツンしたら怒るかな?


「……まぁ、どうせ味がしないなら意味ないか」

よかった。咎めは無しみたいだ。



俺とマギアさんは椅子に腰掛けようとテーブルに近づく。

「……人間くん。私を椅子に座らせてくれないか?」

その椅子は割と座高が高めで、今のロリマギアさんには少々腰掛けづらい高さとなっていた。


「では失礼して」

「助かるよ」

俺は、バンザイをしたマギアさんの脇に手を入れ、抱き上げる。

「……どうした?」

「あ、いやなんでもないです」

そう言い、優しく椅子の上へ下す。

危なかった。可愛すぎて、一瞬抱きしめそうになってしまった。

危ない感情を抑えつけながら、俺も隣に腰掛ける。


「ふむ、ようやくご登場みたいだ」

タイミングよく、もう1人がやって来たらしい。



その瞬間、あたり一面輝き出す。


眩しっ?!??え?え?俺たちもこんな感じで登場してたの?派手すぎない?どういう演出?!


「………」

「………」

だが、いつまで経ってもその光は収まらない。

収まらない中、光の前に立つ大柄な人型の影が現れる。

その謎の人物は名乗りを上げ始める。



「呪いの黄金。祝福と呪い。この穢れた身は光すら拒絶する」


低く、唸るような声が下っ腹を響かせる。

え?なになに?何が始まってんのこれ。


「我が身に宿る強欲は呪いの炎となりて、魂を焦がし続けるだろう」


(あのー、マギアさん、これツッコミ待ちですか?)

ノリノリウェイな気持ちを挫かないために、一応小声で問いかける。

(ははは、まぁ少し見守ってやっておいてくれ)


マギアさんのその瞳からはなんとなく呆れの感情が伝わってくる。

……とりあえず聞いておくか。



「大地が怨嗟と邪気に満ち溢れ、欲と愛憎が交わり時、悪意が産声を上げるだろう。生まれ堕ちしその邪心を鬨の声としよう」


盛り上がりる用にその声量は少しずつ大きくなっていく。

彼の、『イキイキとした名のり口上 〜〜キメキメダサダサポージングを添えて〜〜』

を聞きいていると、なんだか心の奥がむずむずする。

ビシッとポーズを決め続ける影のシルエットがいちいちダサい。



「我は深淵に蔓延る闇そのもの。我は人の望む欲そのもの。さぁ!その穢れた魂で叫ぶが良い!我が名は……ダークネスっっっっ!ゴーーーーーーーっ、ルド!…ドラッッゴン!!!」

その後ろで、さらに強く豪華絢爛な黄金の光が派手に咲き乱れた。そして、少しずつその眩すぎる光が収まってゆく。


目に映ったその姿は……これまた金ピカに包まれた大柄な鎧の姿だった。



だ………だっっっっっっせぇぇぇぇえええ!名前がだっっっっっせぇ!」

マギアさんの友人さんなのだ。きっと仮名なのだろう。ていうか仮名であってくれ。いや、仮名でも結構きついぞ。


「人間くん。気持ちはわかるがそういうのは心に留めておくのが気遣いというものだよ」

「あ、やべ。声に出ちゃってました?」

「それはもう盛大にね」


これはまずい、と、『✟ダークネスゴールドドラゴン✟』さんの方へ目を向ける。


彼はプルプルと震えながら、口を開き出す。

「……は、はははははぁ?!だ、ダサくないし?!ちょうぜつかっこいいし?!くーるびゅーてぃふぉーふぁんたすてぃっく!!だし?!吾輩のこの洗礼されたセンスを理解できない貴様ら人間が遅れてるだけだし??はーーっ、これだから矮小な人間は……センスまでクソ雑魚とか、ほんとしょうもないなぁ〜。この吾輩が100年以上かけて思考に思考を重ねた研鑽の結晶。この美しくも闇深いワードセンスが理解できないとか……遅れてんなぁ〜。まだそこ?(笑)って感じ。早く追いついて理解できるようにならないと、もう取り返しつかなくなるぞ?(笑)」


………え?

は?は?

もしかして、この俺相手にレスバ仕掛けてくる感じ?

もしかして、『喧嘩(ダンス)()ってる感じ?



前世では、ユミちゃんの束縛が強すぎて、リアルどころかネットですら友達を作ることを許されなかった。そんな生活の中で行き着いたのは2chだった。

そして俺はそこで文字という文字…その荒波に揉まれに揉まれた。


猛者が蔓延るあの戦場で生き残ったこの俺相手に、喧嘩ふっかけてる感じ?ふーんへー?まぁいいけど?特別に相手してやっても。

でもあれか(笑)本気出して泣かれたりなんかしたら、大人気ないって思われちゃうし、仕方ないから手加減してやるか(笑)



「いや、百年以上って……それ、センスが百年前で止まってるってことじゃないんすか?百年の周回遅れかましてんの、あなたじゃないすか?『✟ダークネスゴールドドラゴン✟』(笑)さん」

「は〜、やだやだ。これだから短命種は。あっっさいなぁ〜。ま、しょうがないか、百年ぽっちで死ぬ人間の程度なんてそんなもんだよね。知らないようだから特別に教えてやるが、ファッションとか、流行りの文化っていうのは一定周期で繰り返すわけ。そんなことも知らないんじゃ、吾輩のセンスが理解できなくて当然だな〜」

「いやいや、周期って(笑)それ、昔のセンスってこと認めてるじゃないすか(笑)二番煎じってことじゃないすか(笑)あ、百年だから100番煎じか(笑)」




「マギマギやっほ〜。ひっく。あれれ〜私が1番最後か〜。っく」

「やぁ『ウィッチ』…また飲んでるのかい?というか、酔ったまま来てしまったのかい?」

「べ〜つにいいじゃん?ていうか、あの金ピカはなんとなくわかるけど……あの普通っぽそうなのが例の『人間くん』?」

「そうだね」

「なんか、趣味悪トカゲとめっちゃ喧嘩してんだけど、…大丈夫なの?」



俺、こと『悲しき運命に見舞われた孤独なる戦士』(前世のハンドルネーム)と『✟ダークネスゴールドドラゴン✟』(仮名)が言い争いをしている背後で、何やらマギアさんと誰かが喋っているのが聞こえる。

だが申し訳ないが今はそれどころじゃない。まずは目の前のこいつに格の違いというものをわからせる必要がある。



「こ、この…っ!下等な劣等種がぁっ!貴様如き、すぐさま灰に変えてやることもできるのだぞ!」

「きゃぁ〜こわ〜い。言い返せないからって暴力に訴えるなんて野蛮〜。っていうかそれ、敗北宣言と同義だけど大丈夫そ?劣等種に言い負かされるけど、大丈夫そ?ププ」


こうなったらもう俺の独壇場だ。

はん!雑魚がっ!この俺相手に喧嘩を売ったこと、後悔させ––––––


「……ぅっ、うぅぅ、っぐ、うぁぁぁああん、ぁあぁあああん」


やりすぎてしまったのか、つい泣かせてしまった。その泣き声は、先ほどの低い声ではなく、幼い女の子の声になっていた。


……女の子?子供?え、俺……ちっさな女の子相手にムキになって言い争いをしていた挙句、泣かせちゃったってこと?え……俺、ガチのバケモンじゃん……怖。


「人間くん。君も存外、大人気ないところがあったみたいだね。意外な一面が見れて私も嬉しい、と言いたいところだが……その辺にしてやってくれまえ、彼女は少し精神が未熟なんだ」

「す、すみません。まさか子供だとは……」

痛いおっさんではなく、厨二病女児だったというわけか……なるほど、この夢の世界の中ならイメージで声も変えられちゃうわけか。



「彼女に癇癪を起こさせると大変なことになるんだ」

「……本当にすみませ–––え、大変なこと…?」


「もう殺すぅぅ!人間全部滅ぼすぅう!灰燼にして、影も残さないぃいいい!大地を呪いで埋め尽くして全部黄金に変えてやるぅうううう」

泣き喚きながら物騒なことを口走る彼、もとい彼女。

それに加え、いつの間にやら参加していた、魔女っぽい容姿の女性が『いいぞーやれやれ〜ぶっ壊せ〜』と賛同している。



は、ははは。泣いていても厨二病節が抜けないのか、可愛らしいところがあるじゃないか。


「はぁ、また始まった。なんとかしないと大変なことになる」

あくまで表情は崩していないが、それでも面倒そうにマギアさんが呟く。


「………えっと、はは。あれ、冗談、っていうか…う、嘘ですよね?勢いで言ってるだけで、というか別に、本当に出来たりなんかしないですよ……よね?」

「彼女は一見、ふざけたことを言ってるように見えるが……先ほどから言っていることは、まぁそこそこの割合で本当のことであり、彼女にとっては造作もないことなのさ」


「あはは〜人間くん。怒らせちゃったね〜怒れる邪竜を目覚めさせちゃったね〜。罪深いね〜。大罪だね〜。呪いの竜の討伐戦。聖戦(ジハード)だね〜終末戦争(ラグナロク)だね〜やはははははは」

「千年ほど前にもこういうことがあってね。馬鹿な人間が彼女を刺激してしまって……はは、聖なる者(セイクリッド)率いる聖騎士クルセイダーの大部隊と彼女の衝突……あまり思い出したくない光景だったね。」



「……あ、……あぁ?」

彼女達の口から語られる話が、どんどん非現実に現実味を与えてゆく。

意識が混濁し、視界がグニャァアッと歪み始める。



これ、俺のせいで世界が大変なことになる感じ?



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