人狼くん(?)のお迎え②(なんとかなったっぽい)
「リュート!」
この現状をどうにしようと悩みに悩んでいると、聞き慣れた声が響く。
「なんだ……貴様か、白猫」
「シャル…どしたの?」
そこには、『シャルナール・ビウ・ガルシア』の姿があった。
俺の元婚約者で、額にある『聖痕』の製造者だ。
「り、リュート?!大丈……ぶ……そ、その姿は……」
「え?あぁ、これ?これはなんと言います–––かぁっ?!」
その瞬間、物凄い俊敏な動きで押し倒されていた。
「え?え?シャルさん?!」
「ふーッ、ふーッ、リュート、リューと、りゅーと!こ、子作り!子作りしよ?!子作り!シャルがリュートの子を産むから!」
なんかデジャヴだ。最近知り合ったどこぞの吸血鬼さんにもこんなことをされた気がする。
………え?え、え、え、なになに?どしたの急に?!こ、怖いよぅ。襲われてることがじゃなくて、様子が激変したことに恐怖を感じるよぅ。
襲われるのはむしろウェルカム……じゃなくて––––––
その瞬間、シャルのいた空間を貫くように、四方八方から鎖が伸びていた。ルウを縛っている鎖と同じものだ。
だが、その時にはすでに、シャルは俺の上から立ち退いていた。
人狼になりかけている今の俺は夜目が効いている……のに、動きがなーーんも見えなかった。早すぎじゃん?
「何をしてる貴様ぁ……」
声の方を見ると、こちらへ手を伸ばすラミアさんの姿。
「フーッ、フーッ、じゃま、しないで」
シャルは息を荒げている。それは疲れからだとか、息切れなどではない。興奮からだ。
心なしか瞳の中にハートマークが見える。まさに魅了状態。催淫されちゃってない?どゆこと?
「シャルさんや?落ち着いておくれ?今はそれどころじゃないからさ?後でなら、たくさん相手をしてあげ「りゅーとぉ?」……とりあえず一旦落ち着いておくれ?」
ラミアさんの視線が痛い。その鋭い視線についたじろいてしまった。いや違うね、正気に戻してくれたと思うべきだね。
どうやら俺も冷静じゃないらしい。異常事態だから仕方ない、うん。
「ふー、ふぅ。……ん、わかった」
その言葉を聞き、少し落ち着きを見せるシャル。
それを確認した俺は立ち上がり彼女に近づく。彼女の頭を撫でながら褒めてやる。
「よしよし、えらいぞ」
肉球で何かを触る乗ってこういう感覚か、なるほど…確かに他人にベタベタ触られたく無いかも。
「ん、んぅ。ふぅ、ふぅぅッ」
なんか、また怪しくなってきたので早めに切り上げる。後ろの吸血鬼さんも何やら、『ずるい』と呟きながら拗ねてきたので、長引かせると面倒になりそうだし。
冷静さを保ってもらうためにも、一旦、シャルに現状の説明を行った。
○●○●
––––––ということでして、シャルさん、何かいい案はございませんか?」
「ん、わかった。任せて」
おぉ!流石シャルたそ!我らが頼れる『神聖なる者』の筆頭!
そんなあなたに拍手を贈呈していただきます。
ぺちぺちぺちぺち。
肉球ついてるから、うまく拍手できねぇや。
俺の下手くそな拍手を受け流しながら、シャルはおもむろにルウへと手をかざす。
ルウはというと、怯えているのか、それとも体力を切らしたのか……小さい声で唸るだけ。抵抗も止め、大人しくしていた。
その姿をしっかりと見つめ、シャルは唱える。
「《解呪》」
その瞬間、ルウの身体が発火する。あの白い炎だ。
『キャィン!キャンキャヒィン』
その悲鳴と共に、鎖に縛られながらも身体を振るわせ暴れ始める。
「ちょちょちょちょっとシャルさん?!」
犬っぽい悲鳴を聞くと、前世の爺ちゃん家にいた豆柴の小太郎を思い出してして、悲しくなってしまう。
「大丈夫、見てて」
だがそんな俺の制止など構わず、その神聖な炎でルウを焼き続ける。
「え、えぇ……」
シャルは俺が信頼のおける数少ないうちの1人だ。『大丈夫』って言われればそりゃ、信じるけど……
「リュート、…私に出来ることはもうなさそうだし、アレ嫌いだから、一回帰るね……」
そう言い、ラミアさんは、俺の影の中へ沈み込んでゆく。
しまった、俺としたことがこれは失態だ。
「あ、ご、ごめんね?ラミアさん。気が回らなかった。せっかく助けてくれたのに……今度、何かの形でお詫びさせていただきます……」
何をやっているんだ俺は。これだから気も遣えないダメな奴は……
だが、ラミアさんは先ほどの俺の言葉に、頭だけ残してピタッと止まる。
「じゃあ……今度………トして」
なんだ?全然聞こえなかった。だが、こんな失態をしておいて、聞き返すなど今の俺にはできない。
「そんなことでよければ、このリュート・ベルクニフ、全身全霊をかけてその願いを聞き届けてご覧にいれましょう!」
「……ん、わかった。約束ね。予定はまた今度……一緒に決めよ…」
そう言ってズブズブ影の中へ沈んでいった。
なんて言ったんだろうか…?
………まぁ、なんとかなるっしょ!!ラミアさんならなんでも叶えてあげたくなるし!問題なし!うん!
そうしてるうちに、白い炎は収まっていた。
そこには、多分俺と同じくらいまで人の姿を取り戻したルウの姿があった。
完全には戻っていない、だがかなり人に近づいた。
「ルウ!大丈夫か?!」
「ん……はぁ、はぁ、」
気を失ってる。だが、呼吸は安定している。苦しくもなさそうだ。どうやら無事成功したみたいだ。本当に良かった。
これなら部屋に連れ戻せるし、それに、ルウの呪い?もマシになってそうだ。
ルウをそっと抱き上げる。お前も難儀な運命に見舞われてるなぁ。でも俺はお前を手放したりしないからね?2人で頑張って借金返そうなぁ、ニチャァ。
「とりあえず、連れて帰るか…シャル、ありがとう。お前にも今度なにか「またその姿になって」……」
まだ言い切ってないんですが……
まぁ、なんとなく察したよ。獣人である彼女にとっては、今の狼チックな俺の姿は、彼女の琴線に触れるということだろう。
あの発情?っぽいのもこれが理由なんでしょうきっと。
でも、『その姿になって』と言われましても……満月の夜にしかなれないんじゃないの?
というか強制的になっちゃうんじゃないの?
「じゃあ、次の満月の夜、一緒にどこか出かけようか」
その時はとりあえず獣人のフリでもしとけばいいでしょ。
「ん!じゃあ、シャルも帰るね。また来る」
そう言い残し、彼女はすぐさま駆け去ってしまった。
ラミアさん程じゃないにしろ、あの子も中々神出鬼没だよなぁ。
そんなことを思いながら、俺もルウと一緒に帰路へ着くのだった。
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