プロローグ 勇者の凱旋
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王都の大通りは、久方ぶりの熱気に包まれていた。
鐘が鳴り響き、人々が道の両脇に集まっている。
彼らの視線は、ただ一人の少年に注がれていた。
――勇者レオン。
魔獣を討伐し、生還した英雄。
教会はその功績を誇張し、伝説の再来のように語り広めていた。
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### 2
「見ろ、あれが勇者だ!」
「若いのに……なんと気高い姿だ!」
人々の歓声が絶え間なく響く。
レオンは馬に跨りながらも、どこか戸惑ったように顔を伏せた。
彼の胸にはまだ、あの夜の記憶が残っている。
――裏切りの勇者、リオネル。
そして、魔王を名乗る僕の言葉。
それらは疑念となり、彼の心を揺さぶり続けていた。
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### 3
だが、教会の大司教は朗々と宣言する。
「勇者は神に選ばれし存在!
この少年こそ、人類を導く真の光である!」
群衆は歓声を上げ、レオンを称える。
その中で、レオンは剣を掲げるが――瞳の奥には迷いが滲んでいた。
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### 4
その光景を、遠くの屋根から一人の影が見下ろしていた。
マントを翻し、鋭い視線を王都へ注ぐ。
リオネル。
彼の口から、低い声が漏れる。
「……レオン。お前が選ぶ道が、真実であることを願う」
だがその眼差しは、決意に満ちていた。
次の再会が、ただの偶然では終わらぬことを知っていたからだ。
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### 5(ラスト)
王都に響く凱旋の鐘。
だがその音色は、祝福だけではなく――嵐の前触れでもあった。
勇者レオンの栄光は、やがて血に塗れる未来へと繋がっていく。
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