第12章 別れと再会の予兆
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森に漂う血と炎の匂いが、ようやく静まっていった。
倒れ伏した魔獣は動かず、その巨体は闇に溶けるように崩れていく。
剣を収めたリオネルとレオンは、しばし互いを見つめていた。
敵か、味方か。
その答えはまだ、どちらにも傾いてはいなかった。
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### 2
「……あなたは強い。
でも、それ以上に……人を守ろうとする心を持っている」
レオンが低く呟いた。
リオネルは小さく苦笑する。
「そうか? 俺は守れなかったものばかりだ」
言葉に重さが落ちた。
その響きに、レオンはわずかに目を伏せる。
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### 3
僕は二人に歩み寄り、静かに口を開いた。
「レオン。お前はまだ“真実”を知らない。
だが、今日の戦いで何かを感じたはずだ」
少年の瞳が揺れる。
「……わからない。
でも……少しだけ、あなたたちが言うことにも耳を傾けてみようと思った」
その言葉に、ミレイアが安堵の息をつく。
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### 4
しかし――
遠くから角笛の音が響いた。
王国の兵と教会の追手が迫っている。
レオンは剣を握り直し、振り返る。
「ここで別れです。
僕は勇者として、人を導かねばならない」
「……そうだな」
リオネルは短く答える。
その横顔には、わずかな寂しさが滲んでいた。
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### 5
レオンは一歩下がり、剣を掲げた。
「次に会う時……僕たちは敵かもしれません」
「敵でもいい。……ただし、お前が本当に守るべきものを見失わなければな」
リオネルの言葉は鋭くも、どこか祈りのようだった。
レオンは小さく頷き、背を向けて走り去っていった。
白い背中が木々に消えるまで、誰も声を発しなかった。
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### 6(ラスト)
静寂の中、ゼノが口を開く。
「……これでいいのか?」
僕は空を仰ぎながら答えた。
「今はまだ、それでいい。
いずれまた出会う。その時こそ、決着がつくだろう」
夜空に浮かぶ月が、淡い光を投げかけていた。
それは――別れの予兆であり、再会の約束でもあった。
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