第10章 二人の勇者、邂逅
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森の中、剣戟の余韻が残る空気を切り裂いて、レオンが歩み出てきた。
彼の周囲には柔らかな聖光が揺らめき、血と泥にまみれた戦場の中で、ただ一人清浄な存在のように見えた。
「……あなたがリオネル、なのですね」
幼さを残した声が夜に響く。
リオネルは剣を構えたまま、苦しげに唇を結んだ。
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両者の間に漂う空気は、言葉にならない緊張で満ちていた。
やがて、レオンは一歩前に出る。
「どうして……どうして魔王のもとにいるのですか?
あなたは人類の勇者だったはずです!」
その問いは純粋で、まるで子どものようだった。
だがだからこそ、リオネルの胸を最も深く抉った。
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リオネルは低く答える。
「……俺は人を守るために戦った。だが教会は人を“守らなかった”。
利用し、見捨て、偽りの光で覆った……だから俺は――」
「嘘だ!」
レオンが叫ぶ。
「教会は神の導き! 人を導く真実です! あなたの言葉こそ、闇に堕ちた証!」
その声に、リオネルは言葉を失った。
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### 4
僕は横から一歩進み出て、二人の間に視線を投げる。
「……レオン、お前はまだ何も知らない」
その名を呼ぶと、少年はわずかにたじろぐ。
「教会の影を見たことがあるか? 利用され、捨てられる者の声を聞いたことがあるか?」
「黙れ! 魔王が人を語るな!」
レオンの瞳は憤りで震えていた。
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### 5
その刹那、レオンが剣を抜いた。
白光が森を照らし出し、空気が張り詰める。
リオネルもまた剣を構える。
「……避けられないか」
二人の勇者の視線が交錯し、火花が散るような気迫がぶつかり合った。
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### 6(ラスト)
剣が振るわれる――直前。
森の奥から、さらに強大な魔力の気配が押し寄せた。
地鳴りと共に現れたのは、教会が放った異形の魔獣。
“勇者の初陣”を飾るために用意された、巨大な獲物。
レオンとリオネルの剣先は、同時にそちらへと向いた。
――勇者と勇者、初めての邂逅は、思わぬ形で共闘の幕を開けた。
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