第9章 勇者狩り
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魔王城から離れた森の街道。
月明かりの下、リオネルと僕は偵察の帰路についていた。
木々のざわめきが妙に重い。鳥の鳴き声ひとつ聞こえない。
「……妙だな」
リオネルが剣に手をかけた瞬間――。
矢の雨が闇から降り注いだ。
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僕たちは咄嗟に身を翻し、魔法障壁で矢を弾く。
森の影から現れたのは、鎧に身を包んだ十数人の騎士。
胸には“聖印”が輝いている。
「勇者リオネル! 神の敵、裏切り者!」
「今ここでその首を討ち取る!」
剣を掲げ、彼らは一斉に襲いかかってきた。
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リオネルは聖剣を抜き放ち、真正面から応じる。
「俺を討ちに来たか……! ならば――覚悟を見せろ!」
剣と剣がぶつかり合い、火花が散る。
彼の動きは鋭く、だが敵は容赦なく数で押し寄せてくる。
「……これは、ただの討伐隊じゃないな」
僕は魔法で森の地形を変え、敵の動きを封じながら気づいた。
「“勇者狩り”――お前を葬るために、周到に用意された罠だ」
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### 4
敵の中には、聖騎士団の紋章を刻む者すら混ざっていた。
彼らの顔に迷いはなく、狂信的な決意だけがあった。
「裏切り者は、生かしてはならぬ!」
「勇者の名を汚した者に、神の裁きを!」
その叫びは剣より鋭く、リオネルの胸を抉った。
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### 5
だが彼は叫び返す。
「裏切ったのは……俺じゃない! 人を利用し続けるお前たちこそ、真の裏切り者だ!」
聖剣が閃き、騎士の盾を粉砕する。
その姿に、僕は確信した。
――リオネルはもう、迷わない。
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### 6(ラスト)
激戦の最中、敵の後方から更なる影が現れた。
その小柄な体躯に、聖なる光を纏う姿。
「やめろ!」
澄んだ声が響く。
現れたのは、勇者レオンだった。
彼の瞳はまっすぐにリオネルを射抜いていた。
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