第6章 勇者と勇者
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王都の大広場。
群衆が押し寄せ、歓声が空を震わせていた。
白亜の壇上には、純白の法衣を纏った少年が立つ。
「……あれが」
伝令に伴われて潜入した僕とゼノ、そしてリオネルは、群衆の中からその姿を見上げた。
黄金色の髪を陽光に輝かせ、透き通る瞳で民衆を見渡す少年――新たな勇者、レオン。
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「勇者レオンよ! 神はお前を選ばれた!」
大司教の声に合わせ、群衆が一斉に叫ぶ。
「「おおおおおおお!!!」」
民は歓喜に酔い、希望に縋る。
その光景に、リオネルの横顔が歪んだ。
「……俺が守ると誓った民が……今はあいつを……」
彼の拳が白くなるほど強く握られる。
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壇上のレオンが剣を掲げる。
まだ幼さを残すその姿は、清廉にして無垢。
だがその背後に立つ教会の司祭たちが、冷たい瞳で群衆を見下ろしていた。
「……完全に操り人形だな」
ゼノが低く吐き捨てる。
僕は頷き、リオネルに目を向けた。
「どう見る?」
「……まだ未熟だ。だが……“純粋すぎる”」
リオネルの声は震えていた。
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### 4
そのとき、レオンが人々に向けて言い放った。
「魔族は人類の敵! 勇者リオネルは闇に堕ち、魔王に仕える裏切り者となった! 皆を護るのは、私だ!」
群衆が一斉に「勇者!」と叫ぶ。
その名が反響するたびに、リオネルの心が抉られるのが伝わってきた。
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### 5
リオネルが小さく呟く。
「……あいつの目は、かつての俺だ」
その声には苦痛と、わずかな憐憫が滲んでいた。
僕は短く息を吐く。
「いずれ、勇者と勇者が相まみえる時が来る。だが――その時どうするかは、お前次第だ」
リオネルは目を伏せ、深く頷いた。
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### 6(ラスト)
群衆の歓声に包まれ、レオンは聖剣を掲げ続ける。
その影の中で、僕たちは静かに決意を固めていた。
――勇者と勇者。
光と影が重なり合う時、世界の運命が大きく動き出す。
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