第4章 勇者候補の影
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夜の王都。
大聖堂の奥深く、蝋燭の明かりに照らされた広間に数人の神官が跪いていた。
壇上には白銀の法衣を纏った大司教と、黒衣の枢機卿たち。
「勇者リオネルは堕ちた。ならば新たな光を立てねばならぬ」
低い声が響き、空気が凍りつく。
「神聖の儀を終えた候補者は……どうだ」
「順調に適応している。かつての勇者よりも従順で、教会の意志に逆らうことはないだろう」
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暗がりから一人の少年が現れた。
年の頃はまだ十代半ば。
黄金色の短髪と澄んだ瞳を持つ、あまりにも清廉な容姿。
「……彼が」
「そうだ。神に選ばれし“第二の勇者”だ」
神官たちの目が恍惚に濡れる。
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少年は無垢な瞳で大司教を見上げた。
「私は……本当に勇者になれるのですか?」
大司教は慈愛を装った笑みを浮かべる。
「神はお前を選んだ。リオネルが闇に堕ちた今、真に人々を導くのはお前しかいない」
その言葉に、少年は小さく頷いた。
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だがその背後では、枢機卿たちが囁き合っていた。
「まだ未熟だ。だがそれがいい。操りやすい」
「リオネルのような暴走は二度と繰り返さぬ」
「この“従順な勇者”で、王国も民も支配できる」
燭火に揺れる彼らの影は、天へ捧げられる祈りのようでありながら、同時に深淵の闇のようだった。
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少年の名は――レオン。
やがて「新たな勇者」として世に現れるその姿が、リオネルとアレンの前に立ちはだかることになる。
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### 6(ラスト)
その夜、大聖堂の鐘が低く鳴り響いた。
それは新たな“勇者”の誕生を告げる鐘だった。
――裏切りの勇者と、新たな勇者。
世界は再び、大きく揺らぎ始めていた。
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