第3章 魔族たちの反発
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魔王城の訓練場。
黒き石畳の上で、数十人の魔族の兵たちが剣を振るっていた。
その中央に立つのはリオネル――だが彼を囲むようにして、兵たちの視線は敵意に満ちていた。
「勇者が俺たちと肩を並べるだと? 冗談も大概にしろ」
「いつ背中を刺すかも分からん奴と、同じ隊に立てるかよ!」
彼らの吐き捨てる言葉が、リオネルの胸に突き刺さる。
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その場に僕が足を踏み入れると、ざわめきが広がった。
ゼノとミレイアも背後に続く。
「……何の騒ぎだ」
僕が問いかけると、角の大きな魔族戦士ガルヴァが前に出た。
「魔王よ、この裏切り者を軍に加えるというのは本気か?」
彼の瞳には憤りと、そして恐れが混ざっていた。
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リオネルは一歩前に出て、低く告げる。
「俺は裏切り者と呼ばれても構わん。だが俺は……もう人間のためだけに剣を振るうことはしない。ここで生きると決めた」
その言葉に、兵たちの間から嘲笑が漏れる。
「人間の口約束なんぞ信じられるか!」
「お前の剣が俺たちの首に向かぬ保証はどこにある!」
怒声が渦巻く中、僕はゆっくりと歩み出て声を放った。
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「保証はない」
その一言に、場の空気が凍りつく。
続けて僕は言った。
「だが、それは人間であろうと魔族であろうと同じだ。裏切りなど、種族に関係なく起こりうる。……違うか?」
沈黙が広がる。
やがてガルヴァが歯噛みし、唸った。
「……っ、言葉遊びを……!」
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### 5
その瞬間、リオネルが剣を抜き放つ。
「ならば、この身で証明するまでだ!」
彼は魔族の兵たちに斬りかかる――ではなく、彼らの前に現れた訓練用の木偶を一刀のもとに斬り裂いた。
聖剣の光が迸り、硬い石の人形が粉々に砕け散る。
「俺の刃は……仲間を護るためだけに振るう! それを疑うなら、俺が何度でも証明してみせる!」
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### 6(ラスト)
静寂のあと、兵の一人が小さく呟いた。
「……バカ正直なやつだ」
やがて、ざわめきは少しずつ収まっていく。
完全な信頼はまだ遠い。だがリオネルの叫びは、確かに心を揺さぶっていた。
――魔族と人間の勇者。
その共存は、まだ始まったばかりだった。
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