第11章 共闘の果て
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影の残滓が消えた広場には、ようやく静寂が戻った。
黒い霧は晴れ、崩れかけた建物の隙間から陽光が差し込んでいる。
だが空気にはまだ、かすかな瘴気が漂っていた。
「……終わった、のか?」
ゼノが剣を肩に担ぎ、深く息をついた。
「いや……これは一時的な封じだ」
リオネルが答える。
その声は疲れ切っていたが、どこか清々しさもあった。
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### 2
ミレイアが駆け寄り、彼に回復の魔法を施す。
「無茶をしすぎです……でも、助かりました」
リオネルは照れ臭そうに顔をそむける。
「礼など要らん……俺はただ、俺の剣を振るっただけだ」
彼の掌は血で裂け、聖剣を握った跡が深く刻まれていた。
それでも、その瞳には迷いがなかった。
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### 3
僕は彼を見つめながら、胸の奥がざわめくのを感じた。
勇者として敵対するはずの男と、肩を並べて戦った――。
それはあり得ない光景だったはずだ。
「アレン」
リオネルが僕を見た。
「……俺は、いつかお前を斬らねばならない。だが……今日だけは、共に剣を振るえたことを誇りに思う」
その真っ直ぐな言葉に、僕は答えを返せなかった。
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### 4
ゼノが静かに口を開く。
「ならば……俺たちは一時的にでも手を結んだ、ということだな」
ミレイアも頷く。
「敵であっても……理解し合えるのかもしれない、って」
誰も声にしなかったが、その場の空気には確かな“絆”のようなものが生まれていた。
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### 5
しかし、安堵の時は長く続かなかった。
広場の向こう――まだ崩れていない城壁の上から、兵の影が見えたのだ。
「……人間の部隊か!」
ゼノが構える。
リオネルの顔が険しくなる。
「まずい……王国がここに討伐隊を送っていたのか」
僕たちは一瞬で理解した。
共闘の果てに待つのは、新たな“衝突”だった。
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### 6(ラスト)
兵士たちがこちらに気づき、警笛が鳴り響く。
リオネルは聖剣を握りしめ、苦々しく顔を歪めた。
「……これが俺の現実か」
僕は彼の横顔を見つめながら、胸の奥で決意する。
――この男を敵にするのか、仲間にするのか。
その選択が、いよいよ迫っていた。
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