第8章 揺らぐ心
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リオネルは膝をついたまま、息を荒げていた。
聖剣は彼の手から離れ、瓦礫に突き刺さっている。
その姿は、かつて僕が知る勇者像とはあまりにも違っていた。
「……救う、だと……?」
彼はかすれた声で呟く。
「俺は魔王を倒すために生まれ、育ち……それ以外に意味など……!」
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### 2
ゼノが前に出る。
「違う。お前は人を守るために剣を取ったはずだ」
ミレイアも杖を握りしめ、震える声で言った。
「あなたは……あの日、私たちを救ってくれた勇者様だった。その心を……まだ覚えてるはず」
その言葉に、リオネルの瞳がわずかに揺らいだ。
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### 3
僕は一歩、彼に近づく。
「お前は勇者だ、リオネル。だがその勇者の定義を、他人に押しつけられているだけなんじゃないのか?」
リオネルの肩が震えた。
顔を伏せ、唇を噛む。
その姿は、魔王を討たんとする覇気に満ちた男ではなく、一人の迷える人間に見えた。
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### 4
「……俺は……」
リオネルは顔を上げ、かすれ声で呟く。
「本当に……勇者だったのか……?」
その問いに答えようとした瞬間――。
大地が揺れた。
崩壊した奈落の裂け目から、再び黒い霧が噴き出す。
ただの瘴気ではない。
そこには、異様な禍々しい気配が混じっていた。
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### 5
「ちっ……まだ終わりじゃなかったか」
ゼノが剣を構える。
ミレイアも咄嗟に詠唱を始める。
だがリオネルは――立ち上がれなかった。
彼は聖剣を見つめ、震える手を伸ばそうとして、途中で止めた。
「……俺には……もう……」
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### 6(ラスト)
彼の心は揺らいでいた。
勇者としての使命と、人としての願いの間で。
その迷いは、かつてないほど深かった。
そして――。
奈落の闇が再び、僕たちを呑み込もうとしていた。
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