第5章 声の行方
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廃墟を吹き抜ける風に混じって――確かに声が聞こえた。
はっきりとは聞き取れない。だが、それは人の声、呼びかける声。
「……今のは……!」
僕は足を止め、耳を澄ませる。
瓦礫の間にこだまする声は、懐かしい響きを帯びていた。
胸が熱くなる。
あれは――ゼノか? それともミレイアか?
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### 2
「……幻聴だろう」
リオネルが冷ややかに言う。
しかし、その表情には疲労の色が濃く、言葉に確信がなかった。
「幻聴なんかじゃない……あの声は……!」
僕は瓦礫を蹴散らし、声のする方角へ駆け出した。
心臓が早鐘のように鳴り響く。
足は鉛のように重いはずなのに、不思議と止まることはなかった。
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### 3
崩れた塔の影に差しかかったとき、再び声が響いた。
「……アレン!」
はっきりと、僕の名を呼ぶ声。
その声に、全身の血が沸き立つ。
「ゼノ……!?」
瓦礫を乗り越えた先に、確かに人影が見えた。
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### 4
その瞬間、背後から瓦礫が崩れる音がした。
リオネルが剣を突き立てて体を支えながら、低く唸った。
「仲間か……ならば――」
彼の瞳に再び闇が宿る。
弱り切っているはずなのに、聖剣を構えようとしていた。
「やめろ……!」
僕は即座に黒炎を展開し、ゼノたちへと繋がる道を守ろうとした。
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### 5
リオネルの刃が振り下ろされる、その直前――。
「アレンッ!」
声と共に、光の矢が飛んだ。
それはリオネルの剣を弾き、瓦礫を砕き、間に割って入った。
目を見開くリオネル。
そして、瓦礫の向こうから現れたのは――ミレイアだった。
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### 6(ラスト)
銀の髪を乱し、疲れ切った姿で、それでも彼女は杖を掲げていた。
その後ろには、血にまみれながらも剣を握るゼノの姿。
「……やっと……見つけた……!」
ミレイアの声が震える。
僕の胸にも、熱いものが込み上げてきた。
長い戦いの果て――ついに、再会の時が訪れたのだ。
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