第2章 地上への帰還
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奈落は崩壊を続けていた。
瓦礫が次々と落ち、黒い霧が噴き出し、あらゆるものを飲み込もうとしている。
このままでは、僕もリオネルも一緒に潰されて終わりだ。
「……立ってろよ、足……!」
重い身体を無理やり引き起こし、崩れかけた石の橋を走り出す。
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### 2
その後ろで、リオネルも同じように地上を目指していた。
互いに憎み合いながらも、いまは生存本能が勝っている。
「ここで……死ぬわけには……いかん!」
彼の咆哮が響き、瓦礫を押し退けながら進んでいく。
その姿は、勇者でも怪物でもなく――ただ必死に生き延びようとする人間そのものだった。
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### 3
奈落の壁に沿って、崩れた階段のような通路が見えた。
僕はそこに飛び込み、黒炎を足場代わりにしながら駆け上がる。
瓦礫が肩をかすめ、血が飛ぶ。
「ゼノ……ミレイア……待ってろ……必ず戻る!」
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### 4
やがて、頭上に外の光が見え始めた。
廃都の割れた地表から差し込む、かすかな太陽の光。
その一筋の光が、救いの道標のように思えた。
「……もう少し……!」
腕を伸ばし、瓦礫の縁に指をかける。
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### 5
だが、そのとき。
背後から強烈な気配が迫った。
「待て、魔王ッ!」
リオネルの声。
次の瞬間、聖剣が瓦礫を砕きながら振り下ろされる。
崩れた足場が落下し、僕の体が再び闇に引きずり込まれそうになった。
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### 6(ラスト)
「……ふざけるなッ!」
僕は残った黒炎を爆発させ、瓦礫ごと跳躍する。
光の穴へ――地上へ向かって。
振り返れば、リオネルもまた血に濡れながら、必死にその後を追ってきていた。
奈落の崩壊と共に、僕たちは地上への帰還を賭けた最後の登攀を続けていた。
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