第1章 廃墟に立つ者
### 1
――静寂。
奈落を覆っていた轟音も咆哮も消え去り、ただ崩れ落ちた瓦礫と黒煙だけが残っていた。
全身は血と煤に塗れ、呼吸は荒い。
だが、それでも僕は――立っていた。
「……勝った……のか……?」
黒炎の剣を杖代わりに、崩れゆく大地に身を支える。
だが視界の端で、瓦礫の中から光が滲み出すのを見た。
---
### 2
瓦礫を押し退けるように、リオネルが姿を現した。
その体は深く傷つき、血が滴り、影翼は千切れかけていた。
だが――その瞳はまだ死んではいなかった。
「……まだ……立っているのかよ……」
僕は唇を噛み、炎を灯そうとした。
けれど、腕は鉛のように重く、黒炎はすでに残り火しか残っていなかった。
---
### 3
リオネルはふらつきながらも聖剣を支える。
その刃も半ばは砕け、もはや輝きは失われている。
「魔王……俺とお前……ここで終わるのは……どちらだ……」
言葉と共に、彼はゆっくりと歩み寄ってくる。
互いに、もう一撃で限界。
立っているのが奇跡のような状態だった。
---
### 4
そのとき――奈落の崩落が加速した。
床が裂け、瓦礫が飲み込まれ、黒い霧が噴き出す。
「……ちっ、まだ終わっちゃいないのか!」
僕は必死に体を動かすが、足場が崩れ、再び落下しかける。
リオネルも同じように体勢を崩し、必死に剣を突き立てて耐えていた。
---
### 5
やがて、地鳴りと共に天井が大きく崩壊した。
外の光が奈落に差し込み、長い夜のような戦場に一筋の輝きが落ちる。
その光を浴びながら、僕はかすかに笑った。
「まだ……生き延びるチャンスはある……」
---
### 6(ラスト)
崩壊の只中で、僕とリオネルはなお立っていた。
互いに満身創痍で、決着もつかぬまま。
奈落の廃墟に残るのは――二人の影だけだった。
---




