第10章 勇者の変貌
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リオネルの体を覆う光と闇が、ついに臨界に達した。
聖剣が悲鳴のような音を立て、刃が黒い結晶に覆われていく。
彼の背からは翼のような影が伸び、眼は赤黒く輝いた。
「……人間の枠を、超えてやったぞ……!」
声は低く濁り、もはや別人のようだった。
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その姿は勇者でありながら、怪物でもあった。
聖なる光と奈落の闇を併せ持つ、異端の存在。
僕の黒炎さえも、彼の影翼が振るうだけで掻き消される。
「ぐっ……!」
渾身の一撃を放ったが、リオネルは片手で受け止め、口元に嗤いを浮かべた。
「魔王、お前の炎……もはや俺には届かぬ!」
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### 3
瓦礫が降り注ぎ、奈落の床は崩れ続ける。
その混乱の中でも、リオネルの動きは異様に研ぎ澄まされていた。
剣戟一つで空気が裂け、衝撃波が壁を砕く。
「こんな化け物に……!」
僕は必死に黒炎を広げるが、押し返される一方だった。
手の感覚が麻痺し始め、剣が重く感じられる。
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### 4
「どうした、魔王! お前こそ人を超えた存在だろう!」
リオネルの影翼が振り抜かれ、僕の体が壁に叩きつけられる。
口から血が溢れ、視界が揺れる。
「まだ……負けて……たまるか……!」
必死に立ち上がるが、膝が震えて思うように動かない。
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### 5
リオネルは天を仰ぎ、咆哮した。
「力が……あふれる……! これが神の加護と、奈落の力だ!」
その声に呼応するように、奈落全体が振動し始める。
古代の文様が再び光を放ち、彼を中心に渦を描く。
まるでこの地そのものが、彼の変貌を歓迎しているかのように。
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### 6(ラスト)
僕は唇を噛み締め、黒炎をさらに燃やす。
だが、その火でさえ、彼の変貌した姿の前では小さな灯に過ぎない。
「さあ、魔王! この姿の俺を超えてみせろ!」
リオネルの咆哮が奈落を震わせ、決戦は新たな段階へ突入していった。
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