第7章 ハッタリ戦術、炸裂
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勇者一行が退却した後、城内は勝利の熱気で包まれていた。
兵士たちは酒を酌み交わし、四天王ですら珍しく笑みを浮かべている。
「陛下のお力、まさに絶大……!」
「人間どもを恐れさせるとは!」
僕は笑顔を作りながら相槌を打った。
(いや、絶大なのは偶然出てきたドラゴンなんだけど……)
その夜、寝台の上で天井を見つめながら考え込む。
(……このままだと、いつかハッタリがバレる。でも、もう“魔王”を演じるしかない)
胃が痛む。でも同時に、不思議な高揚感もあった。
だって、僕が一言叫んだだけで数千人が動くんだ。
責任の重さと、舞台役者みたいなスリル。
(よし……なら、徹底的に演じ切ってやろう。ハッタリを武器に!)
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翌日。
人間軍が再度攻めてくるとの報が入った。今度は数百規模の部隊だという。
城壁に立った僕は、兵士たちの不安げな顔を見渡した。
(よし、やるぞ……!)
右手を高く掲げ、声を張り上げる。
「恐れるな! 我が眼差し一つで、敵は灰となる!」
もちろん、そんな力はない。
けれど兵士たちの表情が一斉に引き締まった。
人間軍もざわめいている。
「や、やばい……魔王が何か仕掛けるぞ!」
僕は心臓バクバクで内心叫んだ。
(誰か、何か起きてくれぇぇ!)
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その瞬間、雷雲が轟いた。
偶然、天候が荒れ始めたのだ。
稲光が走り、僕の背後を照らす。
「……っ!?」
人間軍が一斉に怯え、足を止めた。
「陛下が……雷を召喚なされた!」
「なんという御業!」
兵士たちが歓声を上げる。
(ちょ、ちょっと待て……ほんとにただの天気だよ!?)
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混乱する人間軍に、ゼフィルスが叫んだ。
「今だ、突撃せよ!」
魔族兵が一斉に突進し、人間軍は総崩れとなった。
わずか数分で戦況は決した。
勝利の雄叫びが上がる。
僕はただ、天を仰いで震えていた。
(……すごい。僕、何もしてないのに……勝っちゃった)
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戦いの後。
リュミエールが近づき、じっと僕を見つめる。
「陛下……あなたは本当に、ただの偶然で力を操っているのですか?」
ドキッとする。
(や、やばい! バレた!?)
けれど彼女は続けた。
「……いえ、失礼しました。きっと私ごときには理解できぬ叡智があるのでしょう」
恭しく頭を下げる彼女に、僕は引きつった笑みで応じた。
「う、うむ……その通りだ」
喉がカラカラに乾いていた。
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夜。
戦勝の宴が開かれる。
肉と酒と歌。兵士たちの歓声が響く中、僕は胸の内でつぶやいた。
(……これが、僕の戦い方なんだ。剣も魔法もなくても、ハッタリで勝てる。だったら――)
杯を掲げ、立ち上がる。
「我らは必ず人間どもを退け、この大地に安寧をもたらす!」
割れるような歓声。
その瞬間、僕は気づいた。
(もう僕は、ただの“偽物”じゃない。みんなの目に映る“魔王”そのものだ……!)
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