第1章 敗北の余韻
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戦場は静まり返っていた。
地に横たわるのは兵と魔族の屍、燃え尽きた砦の残骸、そして赤黒く染まった大地。
夜風が吹き抜け、血と煙の臭いを運ぶ。
あれほど轟いていた怒号や叫喚は消え失せ、残るのは呻き声と風の音だけだった。
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### 2
僕は膝をつき、荒い息を吐いていた。
全身に傷を負い、黒炎はもう力を失いかけている。
リオネルとの死闘で、僕は勝ち切れなかった。
いや――勝てなかったどころか、戦場を守り切れず、多くの仲間を失った。
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### 3
ミレイアが駆け寄り、僕の体を支える。
「ご主人様……っ! これ以上は……」
その声は震えていた。普段は決して揺るがない彼女の瞳が、涙で潤んでいる。
「まだ……終わっちゃいない」
僕は掠れた声で答えるが、自分でもその言葉の軽さを理解していた。
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### 4
戦場の向こうで、リオネルは聖剣を掲げていた。
勝敗は決していない。
だが、王国軍の兵士たちはすでに勝利を確信し、歓声を上げていた。
「勇者リオネル様! 万歳!」
「神の御業が我らを導いた!」
その熱狂の渦の中で、僕たち魔族は孤立していた。
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### 5
仲間の魔将たちが次々と報告を持ち込む。
「西の砦、陥落……!」
「南の軍勢、半数が全滅!」
どれも耳を塞ぎたくなる報せばかりだった。
戦力は削られ、士気は地に落ち、再起すら難しい状況に追い込まれていた。
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### 6(ラスト)
リオネルは遠くから僕を見下ろし、わずかに口元を歪めて笑った。
その笑みは「これで終わりではない」と告げていた。
「……まだ、負けていない」
僕は呟き、血に濡れた大地に拳を突き立てた。
敗北の余韻に沈む中、反撃への誓いが静かに胸に刻まれる。
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