第12章 刃の交錯
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戦場の喧噪が遠ざかるように、目の前の勇者リオネルだけが視界に映った。
彼は聖剣を片手に、まるで舞踏のように軽やかに歩み寄る。
「魔王よ。お前が先の勇者を堕としたと聞いた。ならば、俺がその座を継ぎ、お前を討つ」
その言葉は芝居がかった調子で、兵士たちに聞かせるための宣言のようだった。
「……アレンの名を軽々しく口にするな」
僕は黒炎を握りしめ、前へと踏み出した。
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### 2
次の瞬間、光と炎がぶつかり合った。
聖剣が閃き、僕の黒炎が火花を散らす。
衝撃で大地が裂け、周囲の兵たちが吹き飛ぶ。
「強い……!」
リオネルの瞳に驚きが宿る。だがすぐに笑みに変わった。
「なるほど、だからこそ俺が討つにふさわしい!」
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### 3
斬撃が雨のように降り注ぐ。
僕は炎で受け止め、時にかわし、時に反撃する。
だがリオネルの剣筋は洗練され、無駄がなく、しかも聖剣の加護によって力が底知れなかった。
「アレンの剣とは……まるで違う」
心の中で呟く。
アレンの剣には迷いがあった。
だがリオネルの剣には一片の迷いもなく、ただ「魔王を討つ」ために研ぎ澄まされていた。
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### 4
互いの攻防が何十合と続いた。
炎が空を裂き、光が大地を焼く。
その度に戦場全体が震え、兵士たちは恐怖に立ち尽くした。
「楽しいな、魔王!」
リオネルが笑い、剣を振り抜く。
光の衝撃波が砦をえぐり、石壁が崩れ落ちる。
「ふざけるな……!」
僕は怒りの声を上げ、黒炎を槍のように伸ばして突き出した。
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### 5
槍と聖剣がぶつかり、轟音が響く。
その刹那、リオネルの瞳が僕を射抜いた。
「やはり……お前は魔王ではないな」
僕の心臓が一瞬止まったように感じた。
彼は続ける。
「だが、民にとっては真実などどうでもいい。必要なのは、討つべき『魔王』という象徴だ」
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### 6(ラスト)
聖剣が振り下ろされ、僕の黒炎が受け止める。
光と炎が拮抗し、戦場を飲み込む爆音が轟いた。
「リオネル……!」
「魔王!」
――刃と刃が交錯し、物語はさらなる激動へと進んでいく。
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