第6章 勇者パーティ来襲・前哨戦
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その日は突然だった。
魔王城の結界が低く震え、警鐘が鳴り響いた。
兵士たちが一斉に走り出す。空気がざわつき、焦げた匂いが漂う。
「敵襲です!」
見張りの声が轟いた。
僕は玉座の間で報告を受け、血の気が引いた。
「え、え、敵って……人間?」
「はい。しかもただの兵ではありません」
ゼフィルスが険しい顔で告げる。
「勇者一行です」
(……勇者!? マジで出ちゃったよ!)
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城門前の広場に出ると、四人の人影が立っていた。
陽光を反射する剣を構える青年。
祈りの言葉を口にしながら聖なる光を纏う少女。
大弓を背負った狩人風の男。
そして杖を手にした魔導師。
――まさに教科書に載せたいくらいの勇者パーティ。
「ここが魔王城か……!」
剣を握る青年が叫ぶ。瞳は真っ直ぐに、憎悪と使命感で燃えている。
「人間の敵め。今日こそ滅ぼす!」
背筋に冷たいものが走った。
(ちょ、ちょっと待て! 僕、敵どころか元は同じ人間なんだけど!?)
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「陛下。どうかお下がりを」
ゼフィルスが前に出ようとした瞬間、勇者の剣が閃いた。
「魔族どもは下がれ! 狙いは魔王だ!」
光の斬撃が一直線に飛んでくる。
咄嗟に目を閉じた。
――しかし衝撃は来なかった。
恐る恐る目を開けると、ゼフィルスの漆黒の翼が盾のように広がり、光を弾き返していた。
「無礼者め……!」
ゼフィルスの声が低く響く。
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勇者一行と魔族兵がぶつかり合った。
矢が飛び、魔法が炸裂し、石畳が砕ける。
火花と叫び声が交錯する戦場。
僕は完全に場違いだった。
(やばいやばいやばい! これ、ゲームなら即全滅パターンだよ!?)
だけど、全員の視線が時折僕に向く。
勇者側は「魔王を倒す」という目で。
魔族側は「陛下ならどうされるか」という期待の目で。
(……頼むから見るなぁぁぁ!)
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必死に頭を回転させる。
僕にできるのは……ハッタリしかない。
剣を振り上げる勇者に向かって、両手を広げた。
「……我が力を恐れぬか、人間ども!」
声を張り上げ、ただ立ってみせた。
――その瞬間。
城の奥から轟音が響き、地面が揺れた。
どうやら地下に封印されていた魔物が、戦闘の衝撃で目を覚ましたらしい。
黒煙と共に、巨体のドラゴンが姿を現した。
「な、なにっ!?」
勇者が目を見開く。
(うそ、偶然!? 僕の演出に見えてる!?)
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魔族兵が一斉に叫ぶ。
「さすが陛下! 召喚を発動なされた!」
「これが魔王様の真の力!」
勇者たちは明らかに怯んでいた。
ドラゴンの咆哮に圧倒され、後退を余儀なくされる。
「……撤退だ!」
勇者が叫び、光の魔法で仲間を守りながら退却していった。
やがて静寂が訪れる。
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ゼフィルスが振り返り、深々と頭を垂れた。
「お見事です、陛下。勇者すら退けるとは……」
兵士たちも一斉に跪き、歓声を上げる。
「陛下万歳!」
「これで我らの勝利は揺るぎません!」
……いやいやいや。違うんだって!
僕はただ叫んだだけ。ドラゴンが勝手に出てきただけ!
でも誰も疑わない。
信じ切った瞳が、僕に突き刺さる。
(……これ、もう完全に引き返せないやつだな)
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