第11章 偽りの勇者
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空を裂いた光が収まった時、そこに立っていたのは――聖剣を掲げる一人の若者だった。
白銀の鎧に身を包み、金のマントを翻すその姿は、誰が見ても「勇者」と呼ぶにふさわしい。
だが、僕の胸は冷たく凍りついた。
「……アレンじゃない」
彼は確かに勇者の象徴――聖剣を持っている。
けれど、その顔も、その気配も、僕の知る勇者とはまったく違っていた。
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### 2
王国兵たちが歓喜の声を上げる。
「勇者様が……生きていた!」
「いや、違う! 新たな勇者だ! 神が我らを見捨てていなかったのだ!」
悲嘆に沈んでいた兵士たちの目に、再び光が宿る。
その熱気が戦場を揺さぶった。
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### 3
若き勇者は、剣を天に掲げて名乗った。
「我が名はリオネル! 神々の選びし、新たな勇者だ!」
彼の声は澄み渡り、まるで舞台俳優のように響き渡った。
その言葉に兵たちは熱狂し、勢いを取り戻して突撃を開始する。
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### 4
僕は歯を食いしばった。
「……新たな勇者だと? そんな都合のいい話があるか」
すぐ隣でミレイアが低く呟く。
「……あの剣の光、ご主人様が砕いたはずの契約に似ていました」
その言葉に、胸の奥で黒い疑念が膨らむ。
もしあれが、本当に神の選びによる勇者ではなく――王国の造り出した「偽りの勇者」だとしたら。
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### 5
リオネルは聖剣を振るい、戦場に光の奔流を走らせた。
数百の魔族兵が一瞬で薙ぎ払われ、戦線が崩壊する。
その力は確かに本物の勇者と遜色なかった。
「化け物め……!」
仲間の魔将が吐き捨てる。
だが、恐怖と動揺はすでに全軍に広がっていた。
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### 6(ラスト)
僕は拳を握り、炎を燃やす。
「リオネル……。お前の正体が何であれ、ここで見極める!」
新たな勇者の登場により、戦局は一気に覆された。
アレンを失った虚無を埋めるかのように現れたその存在は、希望か、それとも偽りか――。
答えは、刃を交える中でしか掴めない。
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