第10章 開戦
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暁。
灰色の空を裂くように角笛が鳴り響いた。
それは王国軍十万の進軍を告げる合図だった。
地平線の向こうから鉄の波が押し寄せる。
槍の穂先が朝日に反射し、無数の光が一斉に瞬く。
大地を揺らす足音と、太鼓の低音が鼓動のように響く。
「……来たな」
砦の城壁からその光景を見下ろし、僕は息を呑んだ。
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### 2
魔族軍もすでに布陣していた。
黒き旗が翻り、魔導士が詠唱を始める。
獣人たちが牙を剥き、竜騎兵が空に翼を広げる。
仲間たちが並び立ち、視線を交わした。
「ご主人様、指示を!」
ミレイアが叫ぶ。
「――全軍、迎撃開始!」
僕は叫び、黒炎を掲げた。
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### 3
次の瞬間、戦場が爆ぜた。
王国の投石機が火を噴き、巨大な岩が砦を叩き砕く。
魔族の魔術師たちが応じて雷を放ち、敵陣を焼く。
鉄と炎、咆哮と絶叫が入り混じり、大地そのものが割れるような衝撃。
血と煙が立ち込め、空は瞬く間に赤黒く染まった。
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### 4
王国軍の先陣を切って、白銀の鎧をまとった将軍が進む。
彼は勇者亡き後、軍を率いる猛将――ガルド。
「魔王を討ち取れえぇぇ!」
怒声と共に巨槍を振り下ろし、魔族兵を次々と薙ぎ倒す。
「厄介なのが出てきたな……!」
僕は黒炎を放ち、前線へと身を投じた。
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### 5
炎と雷の奔流の中、剣と剣が交わり、命が散る。
ミレイアの槍が鮮やかに閃き、仲間の魔将たちが必死に防衛線を支える。
だが、王国軍の数は圧倒的だった。
一人倒しても、次から次へと兵が押し寄せ、戦線は押し込まれていく。
「まだだ……! 退くな!」
僕は声を張り上げ、炎で敵を吹き飛ばした。
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### 6(ラスト)
その瞬間、空を裂くような巨大な光が降り注いだ。
それはかつて勇者が振るった聖光に酷似していた。
兵も魔族も一瞬動きを止め、空を見上げる。
そこには――新たな聖剣を掲げる影が立っていた。
「……まさか、勇者が……?」
誰かの声が震える。
戦場は混乱に包まれ、開戦の混沌はさらに深まっていった。
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