第8章 絶望の報せ
### 1
王都グランディア――。
白亜の城壁に囲まれたその街は、かつて「人類の灯火」と讃えられた場所だった。
だがその日、城門前の広場には重苦しい沈黙が広がっていた。
使者が血に塗れた旗を掲げて駆け込み、王城に膝をついて告げる。
「勇者アレン……討ち死に……!」
その瞬間、広場は凍りついた。
---
### 2
信じられない、という表情が人々の顔に広がる。
次の瞬間、それは悲鳴と泣き声に変わった。
「嘘だ! 勇者様が死ぬはずがない!」
「……終わりだ……もう魔族に勝てない……」
誰かの声が、群衆の心を決壊させた。
悲嘆、恐怖、怒りが一気に渦巻き、街全体を覆い尽くす。
---
### 3
王城の玉座の間でも同じ衝撃が走っていた。
老王は顔を蒼白にし、震える声で問う。
「……勇者は……本当に……?」
神官長は深く頷き、報告書を差し出す。
「聖印は消えました。勇者の死は、神の加護の喪失によっても確認されています」
玉座に座る王の肩が重く垂れ下がった。
その瞬間、王国の希望は完全に砕け散った。
---
### 4
だが、沈黙を破ったのは宰相の鋭い声だった。
「――魔王だ。すべては魔王の仕業だ!」
彼は民衆の絶望を力に変えるかのように叫んだ。
「勇者様は魔王によって殺された! ならば我らは、血で報いるしかない!
全軍を集めよ! 魔族を根絶やしにせよ!」
その言葉は、悲嘆に沈む群衆の心に火を点けた。
憎悪の炎が一斉に燃え上がる。
---
### 5
その夜、王都では勇者を悼む鐘が鳴り響いた。
だが同時に、広場には戦を求める叫び声が響き渡った。
「魔王を討て!」
「勇者様の仇を取れ!」
悲しみは怒りに変わり、人々は戦を望んだ。
勇者を失ったその日こそが、最大の戦乱の始まりの日となった。
---
### 6(ラスト)
遠く離れた山中の砦で、僕はその報せを聞いた。
アレンの亡骸を前に、仲間たちは沈痛な面持ちで立ち尽くしている。
胸の奥で何かが重く沈んだ。
勇者の死は、ただの喪失では終わらない。
それは、人間と魔族の全面戦争の引き金となるのだ――。
---




