第7章 砕かれた希望
### 1
石板の崩壊を目にした聖騎士たちは、絶望と混乱に沈んでいた。
勇者の姿がぐったりと僕の腕に抱えられているのを見た瞬間、その表情は凍りついた。
「……う、嘘だろ……」
「勇者様が……」
誰もが剣を取り落とし、膝をつく。
勇者こそが王国の希望。
その存在が消えたという事実は、剣より鋭く彼らを打ち砕いた。
---
### 2
沈黙の中、ひとりの神官が震える声で叫んだ。
「これは……魔王の仕業だ! 勇者様を殺したのは……奴だ!」
その言葉に、騎士たちの視線が一斉に僕へと突き刺さる。
怒り、憎悪、悲嘆――すべてが混じり合った、濁った眼差し。
「違う……!」
僕は思わず叫んだ。
「俺はアレンと共に戦った! 彼は……最後まで仲間だった!」
---
### 3
だが誰も耳を貸そうとはしなかった。
彼らにとって勇者は絶対。
その死を受け入れるよりも、敵に責任を押し付ける方が心は安らぐのだ。
「魔王を討て!」
「勇者様の仇を!」
憎悪の咆哮が神殿に響き、十数の剣が一斉に抜かれる。
---
### 4
背後からミレイアが駆け寄ってきた。
「ご主人様! 今は退かないと!」
彼女の声でようやく現実に引き戻される。
僕は唇を噛み、アレンの身体を抱きしめるようにして立ち上がった。
ここで戦えば、勇者の死は本当に「魔王の罪」になる。
それだけは避けなければならなかった。
---
### 5
黒炎を広げ、神殿の壁を焼き破る。
騎士たちの怒声を背に、僕は仲間と共に闇へと飛び込んだ。
胸の中で眠るアレンの体温は、すでに失われつつあった。
その重みが、希望の崩壊を誰よりも鮮烈に物語っていた。
---
### 6(ラスト)
夜空の下、僕は立ち止まり、拳を握りしめる。
「……俺は守れなかった。勇者も……希望も」
風が吹き抜け、遠くで戦火の音が響く。
世界は確実に、さらなる闇へと沈んでいく――。
---




