第5章 契約の内界
### 1
鎖の海がうねり、血の月が不気味に照らす空間――。
その中心に、巨大な鎖の化身が蠢いていた。
全身が無数の鎖で構成され、赤黒い光を放つ眼窩がこちらを射抜く。
『抗う者よ……その魂を供物とせよ』
その声が響くたび、鎖の海が揺れ、無数の鎖が槍のように突き出してくる。
---
### 2
「来るぞ!」
僕は黒炎を広げ、鎖の奔流を焼き払う。
だが焼き切ったはずの鎖がすぐに再生し、数を増して襲いかかってきた。
「際限がないな……!」
アレンが剣で防ぎながら歯を食いしばる。
「なら、切り開くしかない!」
聖剣が輝き、十字に閃光を放った。鎖が一瞬だけ砕け散る。
---
### 3
その隙に、僕は前へと踏み込んだ。
「黒炎よ、道を穿て!」
炎が渦を巻き、鎖の海を割る。
だが化身が咆哮し、周囲の鎖が巨大な壁となって立ちはだかる。
まるで僕たちを内界の奥へ進ませまいとするかのように。
---
### 4
「このままじゃ埒が明かない……!」
アレンが振り向き、僕に叫んだ。
「合わせろ! お前の炎と、俺の光を!」
互いに頷き、同時に力を放つ。
黒炎と聖光が交わり、螺旋のような奔流となって鎖の壁を撃ち抜いた。
轟音と共に、奥の空間が開ける。
---
### 5
そこに現れたのは、鎖の化身の「核」――。
血の結晶のような赤黒い球体が、鎖の中心に浮かんでいた。
その表面には勇者アレンの名と、僕の名が刻まれている。
「……やはり俺たちの魂を鎖に縛っていたのか」
アレンの顔が怒りに歪む。
「ふざけるな! 俺の意志は俺のものだ!」
---
### 6
化身が再び咆哮し、核を守るように鎖を暴れさせる。
数百の鎖が一斉に襲いかかり、空間そのものが軋んだ。
「これが最後の壁だ!」
「なら突破するまでだ!」
二人は並び立ち、それぞれの力を最大限に解き放った。
聖剣が光を裂き、黒炎が闇を焼く。
---
### 7(ラスト)
光と炎が交わり、一本の巨大な刃となる。
それを二人で振り下ろし、核を真っ二つに断ち割った。
眩い閃光が内界を包み込み、鎖の化身の絶叫が木霊する。
赤黒い海が崩れ、血の月が砕け散った。
――契約の内界は、崩壊を始めていた。
---




