第2章 王都潜入作戦
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勇者アレンと誓いを交わした翌夜、僕たちは王都潜入の計画を立てていた。
目的は二つ――
ひとつは、契約の術式を記した“呪印の石板”を奪うこと。
もうひとつは、王国が新たに魔族討伐の兵を集める前に、その情報を断つこと。
「……つまり、王都の心臓部に刃を突き立てるようなもんだな」
アレンが呟く。
「成功すれば戦は避けられるが、失敗すれば……」
「俺たちの首が晒される」
互いに笑みを交わし、その危うさを確認した。
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潜入に選ばれたのは、僕とアレン、そして隠密に長けた魔族の斥候二名。
夜陰に紛れ、王都外壁の下水路から侵入する。
湿った空気、腐臭、遠くで滴る水音。
アレンが鼻をつまみながら小声で言う。
「勇者の旅で竜の巣にも潜ったが……ここは匂いで倒れそうだ」
「黙れ。見張りに気づかれる」
軽口を叩きながらも、彼の剣の切っ先は揺るがない。
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やがて石造りの階段を上り、僕たちは地上へと抜けた。
そこは城下町の裏通り。まだ夜明け前で、灯りはほとんど落ちている。
しかし、王城を囲む警備は異様なほど厳しかった。
「……契約の発効で、王国も俺を警戒しているんだな」
アレンが低く言い、フードを深くかぶる。
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斥候が先行して戻り、耳打ちする。
「王城地下の宝物庫に“呪印の石板”が安置されている模様です。
ただし封印が施され、複数の神官が常に監視を――」
「神官か……嫌な相手だ」
アレンの顔が曇る。
聖属性の術式は、彼の体に残る契約の鎖を刺激する可能性があった。
「俺が囮になる。お前たちは石板を奪え」
アレンが当然のように言った瞬間――
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「待て」
僕は彼の肩を掴む。
「囮は俺がやる。お前はまだ傷が癒えていない」
「だが……!」
「誓ったはずだ。共に抗うと。なら、一人で背負うな」
言葉にアレンは唇を噛み、やがて小さく頷いた。
「……わかった。二人でやろう」
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潜入作戦の火蓋は切って落とされた。
王都の中心、王城地下へ――。
赤黒い鎖に抗うための最初の一歩が、静かに始まった。
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