第11章 鎖に抗う者
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赤黒い契約書を前に、広間の空気は鉛のように重く沈んでいた。
幹部たちの間では怒号が飛び交い、剣を抜く者すらいる。
「王国は勇者さえも駒として扱った!」
「このままでは我らは奴隷同然だ!」
だが、叫びは絶望を払えず、むしろ混乱を広げるばかりだった。
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### 2
僕は深く息を吸い、手を挙げて静止を促した。
黒炎の気配がほとばしり、場が静まり返る。
「……この契約に従えば、未来はない。
だが拒めば、戦になる」
重苦しい言葉が広間に落ちる。
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### 3
老魔導師が一歩進み出た。
「陛下、方法は一つだけございます」
「方法?」
「契約の“錨”――勇者アレン殿を解放することです。
彼を縛っている呪術を断ち切れば、この契約そのものが瓦解するでしょう」
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### 4
幹部の一人が叫ぶ。
「だが、それは勇者を救うことを意味する! 敵を助けろというのか!」
「違う!」
思わず声を張り上げていた。
「勇者は……敵としてではなく、同じ鎖に囚われた者だ!
この罠から解き放たなければ、俺たちにも未来はない!」
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### 5
沈黙が広間を包む。
兵士たちは互いに視線を交わし、それでも誰も反論しなかった。
やがて、一人の若い兵が膝をついた。
「……陛下に従います。
俺たちを導くのは、血の契約ではなく……あなたの意志です」
その声に続き、次々と兵たちが頭を垂れた。
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### 6
胸の奥に熱がこみ上げる。
(俺は……もう“偽りの王”じゃない。
この手で、勇者を救い、鎖を断ち切る)
拳を握りしめた時、黒炎が静かに揺らめいた。
それはもはや暴走の炎ではなく、意志を宿した力だった。
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### 7(ラスト)
「決めた。俺は……鎖に抗う者となる」
声は、広間の奥深くまで響き渡った。
仲間たちの瞳に再び炎が宿るのを見て、僕は確信した。
この戦いは、血の契約に従うものではない。
意志を持つ者たちの、未来を懸けた抗いなのだ。
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