第9章 勇者との再会
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深夜。
地下神殿を離れ、僕は一人で森を歩いていた。
兵士たちの疑心を鎮めた今、必要なのは――敵の本心を知ること。
月明かりが差し込む湖畔に、先に立っていた影があった。
勇者アレン。
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互いに剣を抜くことなく、静かに視線を交わす。
「……来ると思った」
アレンの声は低く、しかしどこか安堵を含んでいた。
「俺もだ。あの契約のこと、どう思っている」
問いかけに、アレンは苦い笑みを浮かべた。
「認められるわけがない。だが拒めば……俺は祖国に裏切り者とされる」
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### 3
沈黙が落ちる。
湖面に映る月が揺らぎ、その光が二人の影を重ねた。
「……お前は人間を滅ぼす気があるのか」
アレンの問いは鋭くも、震えていた。
「俺は、仲間を守るために戦う。それ以上でも、それ以下でもない」
迷わず告げたその言葉に、アレンの目がわずかに揺れる。
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### 4
「もしそれが真実なら……俺は剣を向けるべき相手を間違えているのかもしれない」
勇者の口から漏れた言葉は、自らを縛る枷を打ち破ろうとするものだった。
僕は思わず踏み込む。
「なら、共に抗わないか? 王国の鎖に」
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### 5
だがアレンは首を振る。
「……まだ出来ない。民を裏切るわけにはいかない」
その瞳に宿るのは迷いと責務の炎。
「だが、俺は見届ける。お前が何者なのかを」
そう言って、彼は剣の柄に手を添えた――ただし抜かずに。
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### 6
湖畔の風が吹き抜ける。
敵でも味方でもなく、ただ真実を求めて向き合う二人。
「次に会う時、俺は答えを出す」
アレンはそう告げて背を向け、森の闇に消えていった。
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### 7(ラスト)
残された僕は、胸の奥で奇妙な熱を感じていた。
勇者は敵。だが、同時に……理解者になりうる存在でもある。
(いつか必ず、決断の時が来る。その時……俺は)
湖面に揺れる月を見つめながら、決意を深めた。
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