第7章 密偵の影
### 1
和平交渉の余波が続く地下神殿。
幹部たちは日々議論を重ね、兵たちは緊張の中で訓練に励んでいた。
だがその影で――静かに毒が広がっていた。
---
### 2
夜。
兵舎の片隅で、ひそやかな声が交わされる。
「……王国は必ず勝つ。魔王の下にいても滅ぶだけだ」
「なら、どうする」
「従うしかない。だが……“証”を差し出せば、俺たちは生き残れる」
囁いた兵士の袖口には、見慣れぬ刻印が刻まれていた。
それは、王国が密かに操る“監視の印”だった。
---
### 3
数日後。
僕の元に届いた報告は衝撃的だった。
「食糧庫が……荒らされていました」
報告した兵の顔は蒼白だ。
「毒が混入されていた可能性が……」
幹部たちが一斉に声を荒げる。
「内部に裏切り者がいるのか!」
「いや、王国の密偵が紛れ込んでいるのかもしれん!」
---
### 4
僕は心の奥で冷たい汗を感じていた。
(密偵……王国は最初から、この混乱を狙っていたのか)
すると老魔導師が静かに口を開く。
「陛下。この地下神殿には古より伝わる“真実の石”がございます。
嘘をつけば石は赤黒く光り、真実を告げれば澄んだ青を放つ……」
「つまり、全員を試せと言うのか」
「はい。信を示すには、それしか」
---
### 5
やがて大広間に兵士も幹部も一堂に会した。
祭壇の上には黒曜石のように輝く石が置かれている。
その周囲の空気は重く、誰もが息を呑んでいた。
「一人ずつ、誓え。魔族を裏切っていないと」
僕の声が響く。
---
### 6
次々と兵士たちが石に触れ、青い光を放つ。
安堵が広がりかけたその時――
ある兵士が手を置いた瞬間、石は血のように赤く染まった。
「……っ!」
広間がざわめきに包まれる。
兵士は狼狽し、刃を抜いて突進してきた。
「魔王を討てば……俺は生き残れるッ!」
---
### 7(ラスト)
鋼の閃きが迫る。
だがその刃は、仲間の盾によって弾かれた。
兵士は取り押さえられ、地に倒れる。
その顔に刻まれていたのは、王国の“監視の印”。
僕は拳を握りしめた。
(王国は……ここまでして俺たちを追い詰めるのか)
闇の中で、陰謀の糸はさらに絡み合っていった。
---




