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『神様のバグで死んだけど、リスポーン地点が世界のラスボス城でした』  作者: 匿名希望
血塗られた契約

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第2章 和平の使者



### 1


 翌朝、まだ宴の余韻が漂う広間に、一報がもたらされた。

「王国から……使者が参っております!」


 ざわめきが走る。

 王国軍と血で血を洗ったばかりの魔族に、和平を持ちかけるだなんて――常識では考えられなかった。


「罠に決まってる」

「いや、和睦を装った刺客かもしれん」

 幹部たちが口々に言い合う中、僕は小さく頷いた。


「……会おう。ここで背を向ければ、弱みになる」


---


### 2


 やがて現れたのは、白い外套を纏った壮年の文官だった。

 その背筋は伸び、薄い笑みを浮かべている。

「初めまして……“魔王陛下”。人間王国、特使のセルヴァンと申します」


 言葉にこそ敬意はあるが、その瞳には冷たさしかなかった。

 僕は無言で手を示し、続きを促す。


---


### 3


「王国は、無益な流血を望んでおりません。

 互いに戦いを続ければ、ただ民草が疲弊するばかり……」


 甘い響きの言葉。

 だが、どれほど飾られても、その裏に毒があるのは明らかだった。


 幹部の一人が怒鳴る。

「貴様らが火矢で同士討ちを仕組んだのを、我らは知っている!」


 しかしセルヴァンは微笑を崩さず、さらりと受け流した。

「戦場では混乱がつきもの。真実など誰にも断定できません」


---


### 4


 僕は問いを投げた。

「和平を望むなら、なぜ勇者を前に立たせた。彼は駒じゃないはずだ」


 一瞬だけ、セルヴァンの笑みが強張った。

 けれどすぐに、穏やかな声で返す。

「勇者様は、国の誇りにして象徴。その御方を危険に晒したことは……遺憾であります」


(嘘だ。こいつは、アレンのことなど道具としか見ていない)


---


### 5


 沈黙が広がる。

 やがてセルヴァンは懐から一枚の羊皮紙を取り出した。


「これが王国からの和平条約案です」

 それは、“停戦”の二文字を大きく掲げながら――裏面に膨大な条件を連ねていた。

 領土の割譲、資源の献上、人質の差し出し……。


 和平などではない。隷属の証文だ。


---


### 6


 幹部たちが激昂し、剣を抜きかける。

 その空気を、僕は手を上げて制した。

「……一度、預からせてもらおう」


 セルヴァンが口元に薄笑いを浮かべる。

「賢明なるご判断、感謝いたします」


 そう言い残し、使者は悠然と退いていった。


---


### 7(ラスト)


 残された羊皮紙を睨みながら、僕は拳を握りしめる。

(和平を掲げながら、これは支配の鎖だ……)


 そして脳裏に浮かぶのは――勇者アレンの姿。

 彼は、この欺瞞を知っているのか。それとも……。


---




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