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『神様のバグで死んだけど、リスポーン地点が世界のラスボス城でした』  作者: 匿名希望
真実を裂く刃

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第5章 揺らぐ勇者の心




### 1


 夜の王都は静かだった。

 歓声と祝賀の喧騒は遠ざかり、城壁の上でアレンは月を仰いでいた。


(勇者は、魔王を討つために選ばれた存在……そのはずだ。

 けれど、あの“魔王”は……)


 剣を握る手が震える。

 敵を前にしたときの高揚感ではない。心の奥底にまとわりつく違和感だった。


---


### 2


「アレン?」

 背後から声をかけてきたのは、僧侶エリナだった。

 彼女はランタンを掲げ、柔らかな光で闇を押し返す。


「また悩んでいるのね」

「……ああ」


 アレンは正直にうなずいた。


---


### 3


「俺は……勇者として、魔王を討たなければならない。

 だが、あの男は……人を守ろうとしていた。少なくとも、ただの怪物には見えなかった」


 エリナは目を伏せ、静かに言葉を紡ぐ。

「神殿で学んだ教義では、魔族はすべて敵だと教えられてきたわ。

 でも……もし、それが“間違い”だったら?」


 その問いが、アレンの胸に鋭く突き刺さる。


---


### 4


 そこへ、仲間の戦士ライガが現れた。

「何を話している?」


 アレンは一瞬言葉を飲み込んだ。

 だが、ライガの瞳はまっすぐで、隠し事を許さない。


「……魔王は、討つべき相手なのか。俺には、それが分からない」


 告白に、ライガはしばし沈黙した。

 そして低く言った。

「お前が迷えば、俺たちも揺らぐ。だが……勇者として選ばれたのはお前だ。決めるのもお前だ」


---


### 5


 その言葉の重さに、アレンの胸はさらに締め付けられた。

 王国の命令と、仲間の期待。

 そして――あの“魔王”の瞳に宿っていた、抗いがたい誠実さ。


(もし俺が刃を振るえば……本当に正義なのか?)


 答えのない問いが、胸の中で渦を巻く。


---


### 6


 やがて夜が明ける。

 城下の鐘が鳴り響き、王国軍の召集が告げられた。


 アレンは深く息を吸い、剣を腰に下げる。

(俺は……勇者だ。だが、勇者である前に――一人の人間でもある)


 その想いが、彼の心に小さな決意の芽を残していた。


---




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