第4章 王国の陰謀
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王都グランディア。
白亜の城壁に囲まれたその都は、勇者一行の帰還に沸き立っていた。
鐘が鳴り響き、民衆は通りに集まり、花びらを投げて彼らを迎える。
「勇者アレンよ! 万歳!」
「魔王を討ちに挑んだ我らの英雄だ!」
熱狂の中で、アレンは微かに顔を曇らせていた。
――あの戦い、確かに“魔王”は存在していた。だが、彼の言葉は嘘ではないように思えた。
(あいつは本当に……何者なんだ?)
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城へと戻ったアレンを待ち構えていたのは、王国の重臣たちだった。
玉座の上に座すのは、威厳に満ちた国王レオニード。
「勇者よ、よくぞ戻った」
王の声は朗々として広間に響く。
だが、その瞳には計算された光が宿っていた。
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「魔王は討てたのか」
王の問いに、アレンは沈黙した。
「……まだ、です」
「ほう」
王の口元がわずかに歪む。
「ならば次は、大軍を率いて討伐すればよい。民はお前を待ち望んでおる」
アレンは眉をひそめた。
「ですが……あの“魔王”は、少なくともただの暴君ではない。民を守ろうとしていた。討つべき相手なのか、俺には――」
「黙れ」
王の声が鋭く広間を貫いた。
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「勇者に求められるのは疑念ではない。剣と、勝利だ」
冷たい言葉に、重臣たちはうなずく。
「魔族は脅威だ。討てば民は安堵し、王国は栄える。
……それが、勇者としてのお前の使命だ」
アレンの胸に、氷の塊のような違和感が広がる。
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謁見が終わり、城の外へ出ると、仲間の一人――僧侶のエリナが小声で言った。
「アレン……陛下のお言葉、何かおかしいと思わなかった?」
アレンは頷いた。
「ああ。あれは“国のため”じゃない……“自分のため”だ」
エリナの表情が険しくなる。
「まさか、陛下は……勇者を利用している?」
答えは返せなかった。
だが胸の奥で、その疑念が火種となって燃え始めていた。
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遠く、王の私室では重臣たちが密談を交わしていた。
「勇者は純粋すぎる。魔王を討たせるには監視が必要だ」
「必要なら……勇者ごと切り捨てるまで」
王は杯を傾けながら、不気味に微笑んでいた。
「駒は使い潰すものだ。魔族も、勇者もな」
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