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『神様のバグで死んだけど、リスポーン地点が世界のラスボス城でした』  作者: 匿名希望
勝利の影に潜むもの

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第12章 開戦の刃



### 1


 剣が振り下ろされる。

 アレンの動きは速く、迷いが一片もなかった。

 刃の煌めきが視界を裂き、息を呑む間もなく迫る。


 僕は反射的に身を翻し、辛うじてかわす。

 床石に亀裂が走り、土煙が舞い上がった。


「……やるしかないのか」

 声が震える。だが足は逃げなかった。


---


### 2


 ゼフィルスが咆哮を上げて剣を抜き、ラヴィアが詠唱を始める。

 だがアレンは彼らを視界にも入れない。

 ただまっすぐ、僕だけを見据えていた。


「魔王……! 俺はお前を討つ!」

「アレン、待て! 俺は――!」


 叫んでも、剣が答えるばかりだった。


---


### 3


 激しい斬撃が連続して襲いかかる。

 受け止めれば腕が痺れ、かわしても風圧に押し流される。

 勇者という存在は、常人の枠を超えていた。


 ――勝てるはずがない。

 心の底からそう思った。


 それでも退けない。退いた瞬間、民衆は歓喜し、僕は「偽りの魔王」として処刑されるだろう。

 それだけは許せなかった。


---


### 4


「ぐっ……!」

 剣が肩を掠め、鮮血が飛び散る。

 視界が揺らぐ。


 そのとき――。

 胸の奥で、黒い炎のようなものが揺らめいた。


(……これは?)


 全身に熱が走り、視界が赤黒く染まっていく。

 まるで何かが目覚めるように、力が溢れ出した。


---


### 5


 次の瞬間、僕の腕から黒い光が奔った。

 剣を受け止めたはずの手が、勇者の刃を弾き返す。

 衝撃で広間の柱が崩れ、群衆が悲鳴を上げた。


「な……!? これが……魔王の力……!」

 アレンの瞳が大きく見開かれる。


 僕自身も驚愕していた。

 こんな力、僕は知らない。持っているはずがない。


---


### 6


「はぁ……はぁ……!」

 荒い呼吸の中で、僕はアレンに向かって叫んだ。

「俺は本物じゃない……! だけど、目の前の命を守るためなら――この力だって使う!」


 黒い炎が周囲を包み、床石を焦がしていく。

 民衆は恐怖に叫び、兵士たちでさえ後ずさった。


 ゼフィルスとラヴィアだけが、必死に僕の背を支えていた。


---


### 7


 アレンは剣を構え直す。

 だが、その目に映るのは迷い。

「……お前は、何者だ」


 答えられなかった。

 自分でも分からない。


 ただひとつ確かなのは――この戦いが、もう引き返せない道を拓いてしまったということ。


---


### 8


 黒い炎と聖なる光がぶつかり合う。

 轟音が大広間を揺らし、群衆の悲鳴がこだまする。


 その瞬間、誰もが悟った。

 偽りであろうと、本物であろうと――

 “魔王”と“勇者”の戦いが、ここから始まったのだと。


---




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