第11章 交錯する真実
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剣先が僕の胸元に向けられる。
勇者アレンの瞳はまっすぐで、鋼のように揺らぎがなかった。
群衆が固唾を呑んで見守る中、僕は声を振り絞った。
「アレン……俺を、本当に“魔王”だと思うのか?」
わずかに剣先が震える。
だがすぐに、アレンは強い眼差しで言い放った。
「お前は魔族を率いている。……それが答えだ」
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「違う! 俺は……ただ巻き込まれただけなんだ!」
思わず叫んだ。
玉座の間にざわめきが広がる。
「巻き込まれた……?」
「どういうことだ?」
アレンの眉がわずかに動く。
迷いがある。彼もまた、確信を持てていないのだ。
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僕は必死に言葉を紡ぐ。
「俺は本当の魔王じゃない! ただ、偶然“魔王”として祭り上げられただけなんだ!
力も……民を導く資格も、本当は何ひとつ持ってない!」
民衆がどよめく。
「やはり……偽王だったのか!」
「やっぱり裏切り者だ!」
嘲笑と怒声が入り混じり、空気がさらに荒れていく。
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### 4
アレンが低く問う。
「……なら、なぜ逃げなかった。偽物なら、なぜ玉座に座り続けた?」
胸が抉られる。
確かに、逃げることはできた。けれど――。
「……守りたかったんだ」
「守りたい?」
震える声で続けた。
「戦争で苦しむ魔族も、人間も……俺の目の前で泣いている奴らを、どうしても放っておけなかった!
偽りでもいい……誰かが立たなきゃ、誰も救われない!」
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### 5
沈黙が落ちる。
アレンの瞳に、かすかな揺らぎが走った。
「……お前は、偽りの魔王だ。だが……その言葉に、嘘はないように聞こえる」
剣先がわずかに下がる。
だがすぐに、彼は首を振った。
「けれど俺には“勇者”としての宿命がある。たとえお前が誰かを救いたいと願っても……俺は討たねばならない」
その言葉は、刃よりも鋭く胸に突き刺さった。
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ゼフィルスとラヴィアが間に割って入る。
「勇者! 今すぐ剣を収めろ!」
「そうよ! あなたの敵は陛下じゃない!」
だが群衆の声がそれをかき消す。
「勇者よ、魔王を討て!」
「偽王に死を!」
大広間の空気は熱狂に飲み込まれていた。
アレンと僕の視線が絡み合う。
そこには迷いも、恐怖も、そして確かな信念もあった。
次の瞬間――剣が閃き、運命の衝突が幕を開けようとしていた。
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