第8章 参謀の罠
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深夜の魔王城。
静寂を裂くように、甲高い鐘の音が鳴り響いた。
「賊だ! 賊が侵入したぞ!」
兵士たちの叫びが広がり、城内が騒然となる。
僕は玉座の間から駆け出した。
(賊? この城に……?)
走り抜けた廊下の先――そこに倒れていたのは、警備兵。
胸には人間の武器が突き刺さっていた。
「まさか……人間がここまで……」
その刹那。
背後から兵士たちの声が飛んできた。
「――陛下! なぜここに!?」
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兵士たちの目が、一斉に僕を射抜く。
床には、侵入者が落としたらしき巻物が転がっていた。
拾い上げた瞬間、血の気が引いた。
それは人間の王国の紋章が刻まれた「密書」だった。
しかも――中には僕の名前が記されていた。
《魔王を討つため、王国内の勇者と通じよ。協力者は“偽王”に在り》
「……っ!」
信じられない。
罠だ。完全に仕組まれた罠。
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兵士たちがざわめき、剣を構える。
「陛下……これは……どういうことですか」
「まさか……人間と通じていたのか!?」
僕は必死に叫んだ。
「違う! これは誰かが仕組んだんだ!」
だが、その言葉は虚しく夜に散った。
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その時、参謀グロウが兵を率いて現れた。
「何事かと思えば……なるほど。これは驚いた」
彼はゆっくりと密書を拾い上げ、兵士たちに見せつけた。
「陛下の名が記されたこの文。――これ以上の証拠がありましょうか」
「違う! 俺はそんなこと……!」
叫んでも、兵士たちの目は疑念に濁っていた。
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ゼフィルスとラヴィアが駆けつけてきた。
二人の顔には動揺が浮かんでいる。
「陛下……これは、本当なのですか?」
ゼフィルスの声は低く震えていた。
ラヴィアは僕を見つめ、唇を噛んだ。
「嘘だと言って……お願い……!」
僕は必死に頷いた。
「違う! 絶対に違う!」
だが、密書の存在がその言葉を打ち砕く。
グロウの影が、冷たい笑みを浮かべて揺れていた。
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