第6章 囁かれる裏切り
### 1
魔王城の廊下に足音が響く。
兵士たちの会話が、不自然に途切れる瞬間が増えていた。
「……聞いたか?」
「誰かが陛下の秘密を知っているらしい」
「裏切り者がいる、と……」
小声で交わされる噂。
それはじわじわと広がり、兵たちの視線は鋭く僕の背に突き刺さった。
(裏切り者……? でも、それって……僕のことを……?)
心臓が重く沈む。
ただでさえ偽りの王なのに、今度は裏切り者と疑われるなんて。
---
### 2
玉座の間。
参謀グロウが進み出て、低く報告する。
「陛下。……近ごろ、兵の中に不穏な噂が立っております」
「不穏な噂?」
「はい。“陛下を欺く者が、この城内にいる”と」
兵士たちがざわめき、重苦しい空気が広がる。
グロウの瞳は僕を射抜くように細められていた。
「陛下、このままでは士気に関わります。徹底的に洗い出すべきかと」
それは進言であり、同時に僕への牽制でもあった。
---
### 3
その後、控室でゼフィルスが声を潜めて言った。
「……お気をつけください、陛下。誰かが意図的に疑惑を広めている」
「やっぱり……そうなのか」
僕は唇を噛む。
ゼフィルスの眼差しは真剣だったが、どこか測るようでもあった。
(ゼフィルス……お前まで僕を疑ってるのか?)
胸がざわつく。信じたいのに、信じ切れない。
---
### 4
夜。
廊下を歩いていると、偶然ラヴィアの声が耳に入った。
「……本当に、陛下は魔王様なのかしら」
仲間の兵士と話しているようだった。
僕は足を止め、心臓が握り潰されるように痛んだ。
信じてくれていると思っていた。
それなのに。
(もう……誰を信じていいのか分からない)
闇の中で僕は立ち尽くした。
---
### 5
一方その頃。
グロウは書斎で、密偵から報告を受けていた。
「噂は十分に広まりました。城内は、すでに疑念の渦に……」
「よし」
グロウは口の端を吊り上げた。
「次は“証拠”を見せる番だ。そうすれば、偽りの王は孤立し――いずれ自ら崩れる」
蝋燭の炎がゆらめき、不気味な影が壁に踊った。
---




