表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『神様のバグで死んだけど、リスポーン地点が世界のラスボス城でした』  作者: 匿名希望
勝利の影に潜むもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/137

第5章 勇者の決断



### 1


 夜明け前の薄闇。

 野営地の丘で、勇者アレンはひとり剣を振っていた。

 振るたびに冷気が頬を刺し、肺に鋭い痛みが走る。


(……迷っている場合じゃない)

 剣の切っ先に宿る光は、彼自身の心を映すかのように揺らいでいた。


 魔王の姿が脳裏に蘇る。

 圧倒的な光、兵士を奮わせる声……だが。


(あれは……本当に“魔王”だったのか? それとも……)


---


### 2


 背後から声がした。

「アレン。……また一人で鍛錬か」


 振り返れば、仲間の騎士ライナスが立っていた。

 短く刈り込んだ金髪に、頑強な体躯。常にアレンの右腕として戦ってきた戦友だ。


「お前は考えすぎる。魔王は魔王だ。それ以上でも以下でもない」

 ライナスは岩に腰を下ろし、淡々と言った。


「だが……」

「だが、なんだ?」


 アレンは唇を噛む。


「もしあれが……“本物”じゃなかったとしたら?」


 その言葉に、ライナスはしばし沈黙した。

 やがて低く答える。


「本物だろうと偽物だろうと、民を脅かす存在なら討つ。それが俺たち勇者一行の役目だろう」


 その言葉は鋭く、迷いを斬り捨てるようだった。


---


### 3


 その夜。

 アレンはセリナと共に小さなテントで火を囲んでいた。


「アレン……」

 セリナは小さく呟いた。

「君が迷ってるの、分かる。私だって同じ。でも……」


 彼女は焚き火の炎を見つめた。

「戦争は待ってくれない。決めなきゃいけない時が来る」


 アレンは黙っていた。

 セリナの横顔は、強くも脆くも見えた。

 守りたい――その気持ちだけは、迷いなく胸にあった。


---


### 4


 翌日。

 王都からの使者が到着し、国王の命が伝えられた。


「――勇者アレンに告ぐ。速やかに魔王討伐の先陣を切れ」


 兵士たちの間にどよめきが走る。


 アレンは使者の目をまっすぐ見据えた。

「……分かった」


 その声は迷いを含んでいなかった。

 仲間たちが驚いて振り向く。


「アレン……!」

「お前、本当に――」


 アレンは剣を腰に差し直し、静かに言った。

「俺は勇者だ。魔王を討つ。それが……俺に課せられた宿命だ」


 炎のように揺れていた瞳が、今は鋼のごとく固まっていた。


---



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ