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『神様のバグで死んだけど、リスポーン地点が世界のラスボス城でした』  作者: 匿名希望
勝利の影に潜むもの

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第2章 勇者の影と記憶


### 1


 夜風が吹き抜ける丘の上。

 人間軍の野営地では、焚き火がちらちらと揺れていた。


 勇者アレンは火を見つめながら、静かに剣を磨いていた。

 刃に映る自分の顔は、疲れと迷いに濁っている。


(あの魔王……本当に“魔王”なのか?)

 戦場で対峙した時の光景が、脳裏から離れなかった。


 確かに圧倒的な力を見せつけられた。

 空を裂く光、兵士たちを鼓舞する存在感――だが。


(あの眼……本物の魔王にしては、あまりにも……人間的だった)


---


### 2


「アレン、また眠れないのか?」

 声をかけてきたのは仲間の魔法使い、セリナだった。

 栗色の髪を三つ編みにし、穏やかな目をした彼女は昔からアレンの幼馴染でもある。


「……ちょっと考え事だ」

「魔王のこと?」


 鋭い。アレンは言葉を詰まらせる。


「私も見たわ。あの魔王……確かに強かった。でも、あの場で剣を振るわなかった」

「……」

「本当に人間を滅ぼすつもりなら、あの時私たちは全滅してたはず」


 セリナの声は優しいけれど、核心を突いていた。


---


### 3


 アレンは剣を鞘に納め、火を見つめる。

「……俺には、守れなかった過去がある」


 言葉は重く、胸の奥から絞り出すようだった。


「幼い頃……魔族の襲撃で村が焼かれた。父も母も……」


 セリナは黙って頷いた。

 彼女もまた、同じ村で生き延びた数少ない人間だ。


「だから誓ったんだ。俺は勇者として魔族を討ち、世界を救うって。だけど……」

 アレンは拳を握る。

「……あの魔王を見ていると、自分の憎しみだけで剣を振るっていいのか、分からなくなる」


---


### 4


 その時、背後から軍の司令官――人間国の将軍が現れた。

「勇者殿。貴殿の迷いは理解する。しかし魔王は魔族を束ねる王である以上、討たねばならん」


 アレンは振り返り、問いかける。

「……将軍、本当にあれが“魔王”なのですか? 俺には……」


「疑う必要はない」

 将軍の声は冷徹だった。

「たとえ偽りだとしても、魔族を導いているのなら、それは魔王と同義だ」


 アレンの胸に、重い鎖が絡みつくようだった。


---


### 5


 その夜。

 焚き火の光に照らされながら、アレンは一人つぶやいた。


「……俺は勇者だ。魔王を討つために生まれた。

 ……でも、本当にそれでいいのか?」


 夜空の星々は、答えを返さなかった。


---




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