第2章 揺れる辺境の町
---
### 1
王都を発って数日、レオンたちは西の辺境へと足を進めていた。
街道の両脇には広大な草原が広がり、放牧された牛や羊の群れがのんびりと草を食んでいる。
しかし、そんな穏やかな景色とは裏腹に、行き交う旅人や商人たちの顔はどこか険しい。
「なんだか、空気が重いな」
レオンが呟くと、隣を歩くリディアが頷いた。
「ええ……辺境は、王都の騒動が広まるのが遅い。けれど、別の不安が渦巻いているみたい」
馬車の御者から聞いた噂によれば、辺境の町では近頃、連日のように魔物が現れ、住民を脅かしているという。
---
### 2
やがて夕暮れ、目指す辺境の町が見えてきた。
木の柵で囲われた小さな町は、灯りがともっているにもかかわらず、人々の足取りは早く、どこか怯えているように見える。
町の門で兵士に止められた。
「お前たちは旅人か? それとも傭兵か?」
「旅の冒険者だ。休む場所を探している」
カイルが答えると、兵士は深い溜息をついた。
「……なら忠告しておく。この町では夜は外に出るな。魔物がうろついている」
その言葉を背に、彼らは町の中へと入っていった。
---
### 3
宿屋に落ち着いたあと、レオンたちは町の広場を歩いた。
広場の片隅には、黒く焼け焦げた柵の残骸が積まれている。
近くの老婆に声をかけると、彼女は皺だらけの手を震わせながら話した。
「二晩前、魔物が群れをなして押し寄せてきてね……あの柵も、若者たちの命も持っていかれたんだよ」
老婆の瞳には涙がにじんでいた。
レオンの拳が静かに握られる。
「……放ってはおけないな」
---
### 4
夜。
町を囲む柵の外は、草原が風に揺れていた。
月明かりに照らされた静寂の中で、かすかな唸り声が響く。
ミナの耳がぴくりと動いた。
「来る……たくさん……!」
闇の中から現れたのは、赤い目を光らせた狼型の魔物の群れだった。
十、二十……数えきれないほどの影がうごめく。
町を守る兵士たちは恐怖に震え、後退しようとする。
だが、その前にレオンが立ちふさがった。
「ここは俺たちが引き受ける! みんな、下がってろ!」
---
### 5(章の締め)
剣を抜いたレオンの背に、仲間たちが並ぶ。
カイルが笑みを浮かべ、リディアが呪文を紡ぎ、ミナが爪を構える。
狼たちの群れが一斉に飛びかかってくる。
レオンは一歩踏み込み、剣を振り抜いた。
閃光が闇を裂き、夜の戦いが始まった。
---




