第12巻 第1章 新たなる旅立ち
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夜明けの王都は、まだどこかざわめいていた。
ユリウスの敗北、聖女セラフィナの沈黙――人々は昨日の出来事を「神の裁き」ではなく「人の選択」として受け止め始めていた。
砕けた石畳の広場には修復のための人々が集い、倒壊した建物の瓦礫を片付ける手が休みなく動いている。
けれど、その表情には不思議と希望の色があった。
誰もが不安の中に光を見つけ、再び歩き出そうとしていたのだ。
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### 2
城の一角。
簡素な寝台に腰を下ろしたレオンは、包帯に巻かれた腕を見つめていた。
剣を振るうことさえ辛い痛みが残っている。
それでも、彼の眼差しはまっすぐ前を向いていた。
「……俺は、まだ勇者なんかじゃない。
ただ、守りたい人がいるだけだ」
小さな独白は、静かな部屋に溶けていく。
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### 3
扉が開き、仲間たちが入ってきた。
陽気な剣士カイル、落ち着いた魔導士リディア、そして獣人の少女ミナ。
みんな疲れているはずなのに、笑みを浮かべていた。
「おい、寝てる暇なんかあるのか? 王都の復興も大事だが、まだまだやることは山積みだぜ」
「そうね。各地では魔物の活動が活発になっている。勇者の名に縋る者たちが暴れ出す前に、誰かが動かなければならない」
「ミナは、どこでも行くよ! レオンと一緒なら!」
その言葉に、レオンは小さく笑みを浮かべる。
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### 4
窓の外、朝日が完全に昇り、王都の瓦礫を金色に照らした。
レオンは立ち上がり、仲間たちを見渡す。
「そうだな……ここからが本当の始まりだ。
俺たちは神の代わりに、俺たち自身の手で未来を選ぶ。
――旅に出よう」
仲間たちの瞳に光が宿る。
王都を後にし、新たな物語が始まろうとしていた。
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### 5(章の締め)
石畳の道を歩き出すレオンたちの背中に、王都の人々の声が届いた。
「ありがとう、レオン!」
「どうか無事で!」
それは勇者への讃歌ではなく、一人の“仲間”を送り出す声だった。
レオンは振り返らず、ただ剣を背に歩みを進める。
その瞳はすでに遠くを見据えていた。
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