第11章 裁かれる者
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翌朝、王都の広場には異様な緊張が満ちていた。
聖堂騎士たちが民衆を取り囲み、中央には白亜の壇が築かれている。
その壇上に立つのは聖女セラフィナ。
透き通るような声が空に響き渡った。
「民よ。今日は“真実を明らかにする日”です。
神を騙り、混乱を招く者を――ここで裁きます」
群衆の視線は、一人の青年へと集まった。
レオン。
両手を鎖で縛られ、騎士たちに連れられて壇の前に立たされていた。
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### 2
人々の間にざわめきが走る。
「やはり……偽りの勇者だったのか」
「でも、彼も光を……」
「どちらが正しいのか……」
疑念と恐怖が交錯し、誰も真実を言い切れない。
壇の隅には、僧侶の少女ミリアがいた。
彼女は両手を胸の前で強く握りしめ、苦悩に満ちた表情でレオンを見つめていた。
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### 3
セラフィナは聖典を掲げ、高らかに宣言する。
「神託は唯一。勇者はただ一人。
ユリウスこそ正しき勇者、レオンは偽りの徒!」
ユリウスが壇上に現れると、民衆から歓声が沸き上がる。
彼の剣は聖光を帯び、まるで神意を体現するかのように輝いていた。
一方のレオンは、鎖に繋がれたまま俯いている。
その姿は無力に見え、群衆の心に「敗北」の二文字を植え付けていった。
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### 4
しかし、次の瞬間。
雲間から差し込む朝日が、レオンを照らした。
光が鎖に反射し、彼の背を包み込むように輝く。
「……あれを見ろ!」
「鎖ごときに縛られても……まだ光を放っている!」
民衆の間に再び動揺が走る。
セラフィナの顔色がわずかに変わった。
「……惑わされてはなりません! それは偽りの光!」
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### 5
ユリウスが剣を掲げ、レオンに歩み寄る。
彼の瞳は怒りと焦燥で燃え上がっていた。
「ここで終わらせる……! 偽物を斬り捨て、俺こそが唯一の勇者だと示す!」
レオンは顔を上げ、その瞳でユリウスを見据えた。
「ユリウス……俺は勇者かどうかなんて、もうどうでもいい。
俺はただ……人を守りたい。それだけなんだ」
その言葉に、群衆の一部が涙を流し、別の者は激しく動揺した。
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### 6(ラスト)
聖女の裁きの場は、もはや裁判ではなかった。
それは「信じる者」と「疑う者」、そして「利用する者」が交錯する戦場そのもの。
鐘の音が再び鳴り響く。
――次の瞬間、運命の刃が振り下ろされようとしていた。
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