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『神様のバグで死んだけど、リスポーン地点が世界のラスボス城でした』  作者: 匿名希望
「勇者たちの分岐点」

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第7章 揺らぐ信仰



---


### 1


 夜が訪れても、王都は眠りにつくことができなかった。

 昼間に繰り広げられた「勇者同士の激突」は、民衆の心に深い爪痕を残したのだ。

 家の窓辺や酒場の隅々で、人々は小声で囁き合う。


「……二人とも光を放っていた」

「神は一人を選ぶはずでは?」

「じゃあ、聖女様は嘘を……?」


 疑念は夜風に混ざり、王都全体へと静かに広がっていく。


---


### 2


 聖堂の奥深く。

 灯された燭台の明かりの中で、セラフィナは祭壇に跪いていた。

 その唇は必死に祈りを紡ぎ出すが、返答は訪れない。


「どうか……答えを。神よ、なぜ二人に力を与えられたのです……」


 祈りを続けても、彼女の胸に満ちるのは焦燥と恐怖だけだった。

 ――“もし、私の信じる神託が間違っているとしたら?”

 その思いを振り払うように、セラフィナは両手を強く握りしめる。


---


### 3


 一方その頃、レオンは仲間たちとひっそり集まっていた。

 宿の一室で、彼は傷を癒やされながらも、不安を隠せない表情を浮かべる。


「俺は……人々を守りたいだけだ。

 けど、信仰そのものを揺るがせてしまったかもしれない」


 仲間の一人が首を振り、力強く告げた。

「揺らいでいるのは、偽りの信仰よ。

 レオン、あんたの戦いは人々に“考える勇気”を与えたんだ」


 その言葉に、彼の胸に重くのしかかっていたものが少しだけ和らぐ。


---


### 4


 翌朝。

 王都の広場には、信徒たちが集められていた。

 聖堂騎士たちが整列し、セラフィナが姿を現す。


 白い法衣に身を包んだ彼女は、声を張り上げる。

「人々よ! 昨夜の戦いを見て惑わされてはなりません!

 神は唯一にして絶対! 勇者はユリウスただ一人!」


 だが、群衆の中から微かなざわめきが起こる。

「……でも、レオン様も光を……」

「どちらも勇者ではないのか?」


 その声は小さくとも、確かに広場を揺らしていた。


---


### 5


 セラフィナの胸に、冷たい戦慄が走る。

 これまで、彼女の言葉は常に絶対であり、誰もが従ってきた。

 けれど今――その絶対は揺らぎ始めている。


 彼女は必死に祈りを込め、再び高らかに叫んだ。

「信じるのです! 神託を疑うことは、滅びを招くことと同じ!」


 だが、その声に応えるような民衆の歓声は、もうどこにもなかった。

 広場を覆うのは、沈黙と疑念だけ。


---


### 6(ラスト)


 ――信仰が揺らげば、権威も揺らぐ。

 そして権威が揺らげば、聖女もまたただの人間に過ぎなくなる。


 その夜、王都の裏通りでは新たな噂が囁かれた。

「本当に神は我らを見ているのか」

「勇者は、神ではなく人が選ぶべきではないか」


 静かに、しかし確実に。

 聖女の絶対なる支配は、崩れ始めていた。


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