第3章 新たなる聖女
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地方の村に、白い衣を纏った少女が現れた。
まだ十代半ばほどの年齢、金糸のような髪に澄んだ青い瞳。
その姿を見た村人たちは、自然と跪いていた。
「私は……神に選ばれし者。
堕ちた勇者に代わり、この地を救う“聖女”です」
その声は澄み切っていて、まるで天使の歌のように人々の心を支配していった。
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### 2
彼女の名は――セラフィナ。
教会の残党によって「新たな象徴」として担ぎ上げられた存在だった。
だが彼女はただの傀儡ではない。
群衆の前で祈りを捧げると、まばゆい光が人々の傷を癒し、病を取り除いた。
「奇跡だ……!」
「これぞ神の御業……!」
その瞬間、民衆の心は完全に彼女のものとなった。
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### 3
一方その頃、王都にいる僕たちにもその噂が届いていた。
リオネルが苦々しく眉をしかめる。
「新しい聖女ぁ? 胡散臭ぇな。どうせ残党の人心操作だろ」
ミレイアは真剣な表情で首を振った。
「いいえ……報告によれば、彼女は本当に“奇跡”を起こしているそうです。
もしそれが本当なら――ただの操り人形ではありません」
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### 4
レオンが険しい目をした。
「……人々が救われるなら、それはそれでいい。
でも、その力が俺たちに向けられた時、戦わざるを得なくなる」
彼の拳は固く握られていた。
勇者としての自分が新しい“聖女”に取って代わられるかもしれない――その不安が滲んでいた。
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### 5(ラスト)
夜。
王都の広場に、旅人がもたらした噂が再び流れる。
「聖女セラフィナは告げた。
『真の勇者は、神に背き魔王と手を組んだ偽者だ』と……」
群衆がざわめく中、僕はレオンの横顔を見た。
その瞳には、静かな決意と――かすかな孤独が宿っていた。
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