第11巻 第1章 勝利の代償
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王都の夜明けは静かだった。
闇の祭壇は消え、枢機卿の影ももはやない。
だが瓦礫に覆われた広場と、焼け焦げた街並みが戦いの爪痕を物語っていた。
その中心に、勇者レオンはいた。
人々は彼を讃え、涙と歓声で迎える。
けれど、彼の表情は晴れなかった。
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### 2
ミレイアが治癒を続けながら、声を落とす。
「……多くの人が傷つき、命を落としました。
彼らを守りきれなかったのは、私たちの責任でもあります」
リオネルが唇を噛みしめる。
「教会の狂気を止めたのは事実だ。
だが、犠牲を前に“勝った”と胸を張れるかと言われりゃ……」
僕も言葉を飲み込み、拳を握り締めた。
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### 3
その時、群衆の中から一人の少女が駆け寄った。
服は煤で汚れ、瞳は涙で濡れている。
「勇者様……!」
震える声で、少女はレオンの手を握った。
「私の家族は……守れなかった。でも……それでも……
勇者様が戦ってくれたから、私は生きてます。
だから……どうか、自分を責めないでください……!」
その言葉に、レオンの瞳が揺らいだ。
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### 4
レオンは静かに彼女の頭を撫でた。
「ありがとう……。
俺は、まだ弱い。全部を守れるほど強くはなかった。
でも……だからこそ、これからも戦う。
誰も泣かせないために」
少女の瞳に光が宿り、深く頷いた。
「はい……勇者様……!」
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### 5
夜が明けきる頃、王都の鐘が鳴り響いた。
枢機卿の失脚は瞬く間に広まり、教会の権威は大きく揺らぎ始める。
だが同時に、彼らの背後に潜む“本当の黒幕”の噂もささやかれ始めていた。
リオネルが険しい表情で呟く。
「枢機卿ひとりの暴走で済むはずがねぇ……。
裏にまだ何かいるな」
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### 6(ラスト)
レオンは傷だらけの手で聖剣を握り直す。
その刃は夜明けの光を反射し、淡く輝いていた。
「俺は、もう迷わない。
どんな敵が待ち受けていても……俺は、俺の意志で戦う」
その言葉は、まるで新たな旅の始まりを告げる鐘の音と重なっていた。
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