第10章 鏡の勇者
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聖剣と黒き剣がぶつかり合う。
火花が散り、空気そのものが震えた。
レオンと影の使徒――二人の勇者が互いを鏡写しのように動かす。
その剣筋も、構えも、表情までも同じ。
「……俺の動きが、全部読まれてる……!」
レオンは歯を食いしばりながら受け止める。
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### 2
観衆は混乱していた。
「どっちが本物なんだ……?」
「勇者様は二人いたのか……?」
枢機卿は高らかに笑う。
「民よ! 見よ、これが真実だ!
勇者など幻想にすぎぬ! 光も闇も、すべては同じ影に帰す!」
その声に、民の間に疑念と恐怖が広がっていく。
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### 3
影の使徒が刃を振り下ろす。
レオンはギリギリで受け止めるが、衝撃で石畳にひびが走る。
「強さも、技も、完全に同じ……いや……」
僕は気づいた。
「いや、影の方がわずかに強い……!」
レオンは血を吐きながら、それでも剣を握り直した。
「だったら……俺はそれを超える!」
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### 4
互いの剣が何度も交錯する。
レオンの頬に傷が走れば、影の使徒の頬にも同じ傷が現れる。
まるで互いが完全な“鏡”だった。
「同じなら……勝敗は決まらない……!」
リオネルが叫ぶ。
だがレオンの目は揺らがない。
「違う……俺には仲間がいる!」
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### 5
僕ははっとして、両手を突き出した。
魔力は瘴気に吸われる。
けれど――声は届くはずだ。
「レオン! お前は一人じゃない!
俺たちが隣にいる!」
リオネルも叫ぶ。
「立て、相棒! お前が倒れりゃ、俺たちが死ぬ!」
ミレイアも震える声で祈りを重ねる。
「勇者よ……どうか、私たちを導いて……!」
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### 6(ラスト)
その声に応じるように、聖剣が再び強く輝いた。
影の使徒の動きが一瞬だけ鈍る。
「っ……これは……!」
枢機卿が驚愕の声を上げる。
レオンは仲間たちの声を背に、聖剣を振り抜いた。
「俺は俺だ! 鏡なんかに、負けるかぁぁぁッ!」
聖剣と黒き剣が激突し、広場を白光が包み込む。
光が収まった時――立っていたのは、ただ一人の勇者だった。
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