第7章 血の祭壇
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怪物の腕とレオンの聖剣が激突するたび、王都の広場は雷鳴のように震えた。
ミレイアの張る結界がなければ、民はすでに瓦礫の下で命を失っていただろう。
それでも怪物は止まらない。
無数の腕を振り乱し、眼窩から瘴気を噴き出す。
「はぁぁぁっ!」
レオンは全身の力を込めて剣を振り抜き、一撃で三本の腕を斬り飛ばした。
だが――切り口から新たな腕が生え、さらに肥大化していく。
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「ちっ……きりがねぇ!」
リオネルが盾で衝撃を受け止めながら呻く。
僕は魔術を放つが、瘴気にかき消されてしまう。
「魔力が……吸われてる?」
枢機卿がゆっくりと杖を掲げ、薄笑いを浮かべた。
「気づいたか。これはただの怪物ではない。
この広場そのものが“祭壇”なのだよ」
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### 3
足元の石畳をよく見れば、血に染められた無数の線が地面に刻まれている。
人々の恐怖と流された血が魔力に変換され、怪物を肥大化させていた。
「まさか……この街を生け贄に……!」
僕の声が震える。
枢機卿は恍惚とした目で怪物を見上げた。
「神のためならば、民の血すら糧となろう」
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### 4
怪物の咆哮が広場を揺るがす。
ミレイアが必死に祈りを捧げ、結界を厚くする。
だが、その額には汗が滲み、唇は青ざめていた。
「もう長くは……持たない……!」
リオネルが叫ぶ。
「レオン! 一気に決めろ!」
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### 5
レオンは聖剣を両手で握りしめ、深く息を吐いた。
「……俺の剣は、誰かの犠牲で輝くもんじゃない。
俺は、人を守るために振るう!」
その声と共に、剣から溢れる光が祭壇の紋様を逆流するように走り、血の魔力を浄化していく。
「なっ……馬鹿な!」
枢機卿が初めて顔を歪めた。
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### 6(ラスト)
怪物の身体が苦しげにのたうち、崩れ始める。
聖剣の光が血の祭壇を浄化し、刻まれていた紋様が次々と消えていった。
レオンは最後の一撃を振り下ろす。
「光よ――この地を取り戻せ!」
閃光が怪物を貫き、影は絶叫と共に霧散した。
しかし瓦礫の中で、枢機卿はなお立っていた。
その瞳には狂気の炎が宿り、唇から呟きが漏れる。
「ふふ……祭壇は一つではないのだよ、勇者……」
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