第4章 崩れゆく信仰
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剣戟が続く。
レオンの聖剣と、偽りの勇者カイルの剣が打ち合うたび、空気が震えた。
だがその力の差は明白だった。
レオンの頬には汗が流れ、肩口から血が滴る。
一方のカイルは、感情の欠片もない瞳で、ただ機械のように斬撃を繰り返していた。
「俺は……勇者だ……!」
レオンは叫ぶ。
「勇者は、誰かのために戦う者だ!」
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その声に、人々の視線が揺れる。
しかし枢機卿は群衆の前に立ち、嘲笑した。
「愚かな民よ! 言葉に惑わされるな!
神に選ばれしは聖教の勇者カイルのみ!
あの者は偽物だ、反逆者だ!」
怒声と共に、教会の兵が群衆を押し込む。
疑念と恐怖が、再び人々の口を閉ざしていく。
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### 3
ミレイアが震える声で僕の腕を掴んだ。
「このままじゃ……レオン様が……!」
僕も必死に言葉を探すが、声にならない。
人々の心は、いま鋭い刃の上で揺れている。
レオンが倒れれば、すべては教会のものに戻る。
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### 4
カイルの剣が再びレオンを襲う。
ガキィィン!
聖剣が弾かれ、レオンの手から血が飛び散った。
枢機卿の声が響く。
「見よ! 偽勇者はもはや立つこともできぬ!」
群衆のざわめきが一層強まる。
「やっぱり……偽物なのか……?」
「いや……でもあの人は……!」
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### 5
リオネルが一歩前に出かけたその時、レオンが叫んだ。
「まだだ……!」
血に濡れた手で聖剣を掴み直し、再び立ち上がる。
その姿に、民衆の視線が釘付けになる。
「俺は誰に選ばれなくてもいい!
俺は俺の意思で、ここに立つ!」
その言葉は鋼のように強く、震える心に突き刺さった。
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### 6(ラスト)
人々の中から、小さな声が漏れる。
「勇者様……」
「教会じゃなくても……あの人は、俺たちを守ってくれてる……」
揺らぎ始めた信仰が、確かな裂け目を見せ始める。
枢機卿の顔に初めて焦りの色が浮かんだ。
――崩れゆく信仰の中で、真の勇者が立ち上がろうとしていた。
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