第3章 勇者の影
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王都西門の前。
レオンとカイル――二人の勇者の剣がぶつかり合い、轟音が響き渡る。
火花が散るたび、民衆は恐怖と興奮の入り混じった声を上げる。
「どっちが本物なんだ……?」
「聖教の勇者様こそ、神に選ばれた方だ!」
「でも……俺たちを守ってくれたのは、あのレオン様だ!」
希望と疑念が渦巻き、群衆の心は二つに裂かれていった。
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カイルの剣筋は正確無比。
まるでレオンの動きをなぞるように、一手一手が重なる。
だが、その威力は人間離れしていた。
「くっ……同じ型なのに、力が違う……!」
レオンは必死に受け流しながら歯を食いしばる。
リオネルが目を細める。
「……やはりそうか。あれは“模倣”だ。
お前の戦い方をそのまま写し取っている」
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### 3
僕は唖然としながらも理解した。
「つまり……レオン自身が、レオンを追い詰めてるってこと……?」
リオネルが低く頷く。
「そうだ。奴は勇者の影。
本物を超えるための“造られた勇者”だ」
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カイルは感情のない声で告げる。
「勇者レオン。
貴様の道は偽り。
俺こそが正しき勇者――教会に選ばれし者」
冷たい瞳がレオンを射抜く。
まるで鏡の中の自分に断罪されているかのようだった。
「俺の……影……」
レオンは苦悶の声を漏らす。
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### 5
刹那、カイルの剣が弾けるように加速した。
ガキィィン!
レオンの防御を貫き、肩口に深い傷を刻む。
「ぐっ……!」
鮮血が石畳に滴る。
群衆が悲鳴を上げた。
「勇者様が……!」
「やっぱり偽物なんじゃ……!」
疑念が広がり、民衆の目が揺らいでいく。
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### 6(ラスト)
膝をつきかけたレオンを見て、僕の胸がざわめく。
あの時と同じ――“選ばれなかった勇者”が、再び信仰に押し潰されそうになっている。
リオネルが低く呟いた。
「ここから先は……奴自身の戦いだ」
影と影がぶつかる音が、王都の空に響き渡る。
勇者レオンと、その“影”カイル。
己自身を超える戦いが、今まさに始まった。
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