第2章 偽りの勇者
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翌朝、王都の空は重く曇り、どこか不吉な気配が漂っていた。
広場の人々はまだ怯えたまま、しかし勇者レオンを信じようと必死に踏みとどまっていた。
だが、その小さな希望を打ち砕く報せが、すぐに届いた。
「……西門に、“新しい勇者”が現れたぞ!」
兵士の叫びが、王都に混乱を広げる。
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### 2
僕たちは急ぎ西門へ向かった。
群衆の視線の先に立っていたのは――確かに「勇者」の姿をした男だった。
黄金の鎧、光り輝く剣。
だがその眼差しには、人間らしい温もりは微塵もない。
まるで作り物のように冷たく、ただ命令に従う人形のようだった。
「俺は……聖教の勇者、カイル。
この地に巣食う“偽りの勇者”を討つ」
その剣先が、レオンへとまっすぐ向けられる。
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### 3
民衆は混乱した。
「勇者が二人……?」
「どっちが本物なんだ……?」
「教会が言うなら、あの新しい勇者が……」
人々の視線が揺れ、信頼が崩れ始める。
レオンは唇を噛み、しかし剣を下ろさなかった。
「……俺が偽りかどうかは、剣で決めるしかないようだな」
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### 4
リオネルが一歩前に出る。
「待て。あれは“人間”じゃない。
血と呪いで作られた、ただの器だ」
だが枢機卿が群衆に向かって叫ぶ。
「見よ! 新たな勇者を! 神は我らを見捨てていない!」
群衆の心が再び揺さぶられる。
リオネルの言葉は届かない。
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### 5
カイル――偽りの勇者は一瞬で距離を詰め、レオンに剣を振り下ろす。
ガキィン!
金属がぶつかる甲高い音が響き渡る。
レオンは必死に受け止めるが、その力は常軌を逸していた。
「くっ……重い……!」
まるで人の筋力ではない。
それは確かに、“作られた怪物”の力だった。
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### 6(ラスト)
剣と剣が火花を散らす中、僕は気づいた。
――カイルの剣筋は、どこかレオンに酷似している。
枢機卿の冷たい声が響く。
「勇者を超えるには、勇者の型を写すのが一番だ。
お前自身の影が、お前を殺すのだ……レオン」
広場に走る緊張。
本物と偽物――二人の勇者の戦いが、今まさに始まった。
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