第11章 残響と沈黙
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鐘楼が崩れ落ちた後、広場には重苦しい静寂が広がっていた。
瓦礫の山から立ち上る煙。
焼け焦げた石の匂い。
人々のすすり泣く声が、かすかに耳に届く。
あれほど喧噪に満ちていた場所が、今はただ「残響」と「沈黙」だけを抱えていた。
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### 2
レオンは聖剣を地に突き、荒い息をつきながら膝をついた。
額から流れる汗が地面に滴り落ちる。
彼の瞳には疲労と、そして確かな決意が宿っていた。
「……これでいい。
俺は……俺の信じたものを斬った」
その呟きは、静かながらも揺るぎなかった。
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### 3
人々はおずおずと立ち上がり、互いに顔を見合わせる。
「勇者様が……教会に逆らった……」
「でも……俺たちを守ってくれた」
「本当の勇者って……ああいうことなのか……?」
恐怖と尊敬が入り混じった視線が、レオンへ注がれる。
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### 4
リオネルが剣を収め、低く言った。
「……やっと、自分の道を歩き始めたな」
その横顔は、誇らしさとどこか寂しさを帯びていた。
彼自身もまた、かつて“勇者”と呼ばれた男だったから。
僕は小さく頷きながら、広場を見渡す。
「だが……これで終わりじゃない。
教会は枢機卿一人で成り立っているわけじゃないからな」
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### 5
ミレイアが心配そうにレオンへ駆け寄り、彼の肩を支えた。
「勇者様……大丈夫?」
「ああ……まだ立てる」
レオンはゆっくりと立ち上がり、聖剣を握り直した。
その姿に、人々は安堵の息を吐く。
勇者はまだ倒れていない――その事実が、彼らに希望を与えていた。
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### 6(ラスト)
夜風が吹き抜け、炎の残り香を運んでいく。
王都の広場は廃墟と化し、そこに残されたのは、勇者の決断の痕跡だった。
静寂の中、遠くで再び鐘が鳴る。
それは枢機卿の裁きではなく、次なる戦乱を告げる予兆のように響いていた。
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