第5章 選ばされる勇者
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広場を包む炎は弱まりつつあったが、人々の熱狂はなお消えなかった。
「勇者様を信じろ!」
「魔王を討て!」
怒号と歓声が交錯し、空気は狂気じみていた。
その中心に立つのは、ただ一人の少年――勇者レオン。
その手に握られた聖剣は震え、刃先は定まらない。
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### 2
教会の使者が群衆を煽り立てる。
「勇者よ! 選べ!
魔王を討ち、人類の守護者となるか――
それとも迷いに沈み、裏切り者の道を歩むか!」
その言葉に、人々の視線がレオンへ突き刺さる。
選択を迫る、無数の目。
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### 3
リオネルが堪らず叫んだ。
「レオン! そいつらの言葉に惑わされるな!
勇者は人を守る存在のはずだろう!」
だが使者は嗤う。
「裏切りの勇者が何をほざく!
貴様こそ魔王に魂を売り渡した穢れだ!」
群衆の怒声が重なる。
「裏切り者を斬れ!」「勇者様を信じろ!」
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### 4
僕は一歩踏み出し、レオンの瞳を正面から見据えた。
「レオン。お前は勇者だ。
だが勇者とは、神や教会に選ばれるものじゃない。
人を守りたいと願い、そのために戦う者を、誰もが勇者と呼ぶんだ」
静かな声で告げる。
その言葉に、レオンの肩が震えた。
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### 5
ミレイアが涙声で訴える。
「お願い……自分で決めて。
人の声じゃなく、教会の命令じゃなく……
レオン自身の心で、答えを出して!」
少女の声が群衆に響き渡り、一瞬、ざわめきが収まった。
その沈黙の中で、レオンは剣を掲げた。
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### 6(ラスト)
「俺は――」
声が震える。
教会の言葉を選ぶか。
魔王の言葉を選ぶか。
それとも、自らの心を選ぶのか。
群衆が息を呑む。
リオネルが祈るように見守る。
僕はただ、その答えを待った。
勇者レオンは、ついに口を開いた。
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